稽古場日誌
『桜姫東文章』の稽古が始まった。
劇団で《ショート・シーン》と呼んでいる稽古をやっている。
チームに分かれて、ちょっとした打ち合わせののちに、短いシーンを発表する。
過去の公演では、口から卵を吐いたり、ストッキングをかぶって暴れまわったり
したシーンが実際の舞台に登場した。
そのシーンだけ見るとシュールの極みである。
へたしたらただの悪ふざけにしか見えず、人生の大切な時間をこんなくだらない
ものにかまけて良いものか? と思わず自問自答し、ここに至るまでの長い年月に
思いをはせ、悲しくなる。
だがしかし、この迂遠な作業のどこかが突破口になって、鶴屋南北の巨大な世界
へとつながっていくに違いないのだ。
今日の稽古では、後輩の股間に無理やり風船を押し当て、激しく腰を打ちつけ、
風船を割ろうと試みる。
また、別の後輩の袖をまくりあげ、二の腕をキッチン用のスポンジでこすりあげる。
はたまた、風船ごしにディープキスを試みる。
そんな七転八倒ののち、何とか形にして発表した。
近づいているのか、遠ざかっているのか、上を向いているのか、下を向いているのかもわかりませんが……。
かあさん、ぼくは元気にやっています。
斉木和洋
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劇団山の手事情社 創立35周年記念公演
『桜姫東文章』2020年3月14日(土)~17日(火)
会場=東京芸術劇場 シアターウエスト
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