稽古場日誌

桜姫東文章 喜多 京香 2020/01/31

忘れられない人

私にはかつて、ずっと片想いをしていた男の子がいました。
その子に彼女ができてしまったり、私のことを何とも思っていないことがわかったりと、彼が遠ざかれば遠ざかるほど、悲しいと同時に好きな気持ちもどんどん大きくなりました。
この通り、縁がないことははっきりとわかっていました。
しかし、彼と私が同じ2月生まれであることや、好きな色が2色とも同じであること、父親同士がとても仲が良いことなど、何でもない共通点から、
「絶対に運命の人だ」
「行く行くは結婚するのではないか」
などと本気で思い、いつまでたっても諦めがつきませんでした。
どうしても、無理矢理にでも運命とか因果のようなものを感じていたいのです。
まるでストーカーですね。

『桜姫東文章』も、また独特な恋愛が繰り広げられます。高僧清玄が、生まれつき左手が開かない障害をもった桜姫を気の毒に思いお経を唱えると、左手が開き、昔清玄が心中に失敗した相手白菊丸の形見の香箱が出てくるのです。
上記の私のエピソードとは比べものにならない、決定的な因果を感じます。
たちまち清玄にとって桜姫は忘れられない相手となりますが、その一方で桜姫にも、忘れられない男性がいるのです。

そのとんでもない出来事の数々にあなたは共感するのか、ドン引くのか……。
信じ難い光景をリアルに舞台に載せるべく、日々奮闘中です。
そして是非その完成形を、来たる3月、その目でお確かめください。

ご来場、心よりお待ちしております。

喜多京香

**********

劇団山の手事情社 創立35周年記念公演
『桜姫東文章』2020年3月14日(土)~17日(火)
会場=東京芸術劇場 シアターウエスト

詳細は こちら をご覧ください。

稽古場日誌一覧へ