稽古場日誌

桜姫東文章 山口 笑美 2020/02/16

電話の中の鬼

最近こんなアプリがある。
子供がぐずって言うことを聞かない時に鬼やお化けから電話がかかってくる。
「言うことを聞かない時」
「寝ない時」
「ごはんを食べない時」
「歯磨きしない時」
などそれぞれの場合により、いろんなタイプの鬼やお化けから電話がかかってきて会話形式で怖い顔して叱ってくれるのだ。
これ友人から教えてもらった時は感動した。 
ぐずる子供に「電話かかってくるよ!」と言うと「イヤだ~」と効果てきめんで非常に助かる!
しかし、ふと思った。
電話ってちょっと日常的すぎないかなあ。

鬼やお化けって、どこにいてどこから現れるのか分からないから怖い。
姿も声もそれぞれの子供たちの想像の中でとてつもなく怖い姿をしているのだと思う。
美声で電話をしてくるアニメの鬼って、
存在をとても小さくしてやしないだろうか。
別にアニメが悪いわけではないけど。

私にとってはとても便利で、助けられてもいるけど、その便利さは子供の想像力の幅を狭めてしまっているような気もする。
(でも、このアプリを作った方の発想力には頭が下がる)

日本の昔話や古典などを読むと昔の日本人の想像力の豊かさに驚かされる。
だから子供たちにはいつまでも豊かな想像力を持ち続けていってほしいと思う。
私達の日常からは気持ち悪いものが遠ざけられたり、目に見えない怖いものに対する恐怖がどんどん減ってきているけれど、演劇にはそんなイメージをかきたてる力があるんじゃないかな。
私はそんな子供たちだけでなく、かつて子供だった大人の想像力もかきたてる舞台を創っていきたいと思う。

山口笑美

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劇団山の手事情社 創立35周年記念公演
『桜姫東文章』2020年3月14日(土)~17日(火)
会場=東京芸術劇場 シアターウエスト

詳細は こちら をご覧ください。

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