稽古場日誌

オドラデク 安部 みはる 2020/03/26

カフカさんとわたし

山の手事情社は、俳優なのに(!)何年かおきに「演出」担当が巡ってくる。
私にも、2013年の研修プログラム修了公演『つぶやきとざんげ』を演出した倉品淳子の演出助手からはや6年の今年度、ついに巡ってきてしまった。

ここだけの話、山の手事情社には私ほど自信のない俳優はいない、という自信がある。
自分ひとりでは役作りもできないようなダメなヤツだ。
人前で話すのも苦手。
先輩のアドバイスも素直に聞けず、後輩にもドンドン追い越されていく始末だ。
それでも演劇が楽しいらしく、ここまで続けてきている。
そんな情けないヘタレ野郎が「演出」なんてとんでもないや。
約半年ぐずぐずと悩み続けた結果出会ったのが、フランツ・カフカという小説家だ。
カフカは、とにかく絶望している。変なひとだ。
同時代に生きていたら絶対に友達にはなれない。
めんどくさすぎるが、気になって仕方ない。
今の私には「がんばれ!」「うじうじするな!」という前向きな激励より、カフカのどん底から響く言葉が身にしみるのである。寄り添ってくれる気がする。
カフカさん、あなたのこともっと知りたいわ。
というわけで、ヘタレとヘタレの夢のコラボレーションを実現しようじゃなか、と始まったのが今年度の修了公演『オドラデク』だ。

思えば出演者はみんな変わっている。
変な自分を認めることもさらけ出すことも勇気がいる。
自分が「おもしろい」と思うことを発表するのはさらに勇気がいる。
けれど、修了公演『オドラデク』の出演者はみな、心の奥底に恐ろしい「虫」を飼っており、それが見え隠れする時とても魅力的なのだ。
これは、ぜひにでもお見せしなくてはならない。
できる限りおいしく料理して。

もう少しで本番だ。
ヘタレなりのやり方で、今しか見られない公演をお客様にお届けします。
ぜひ劇場へお越しください!

安部みはる

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odradek

2019年度研修プログラム修了公演『オドラデク』
日程:2020年4月8日(水)~12日(日)
会場:大森山王FOREST
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『オドラデク』公演について

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