稽古場日誌

ニュージェネレーション(体験談)研修生 宮﨑 圭祐 2020/07/06

戦い方を見つけられる場所

山の手事情社の研修プログラムへは芝居のスキルアップを求めて参加した。
結果として人生の様々なシーンでの戦い方を学べたと思う。
稽古では身体訓練や発声などの基本的な事から《ルパム》(演劇的なダンス)、歌、身近な人の《ものまね》など様々な事をした。
プロの劇団で稽古をしているプレッシャーからか、場が恐ろしい程白ける様な空回りを何度もした。特に《ものまね》をやった時などはトラウマになる位に場が凍り付いた。「よくわからない」「逃げている」とダメ出しをもらい気持ちの凹みに拍車がかかった。
他にも沢山の失敗を繰り返しダメ出しを受ける。その度に全然ダメだ、面白い表現をしなくてはと自分を追い詰め、動悸が激しくなり日に日に稽古場への足取りが鉛の様に重くなっていく。
しかし、追い詰められると不思議なもので、ポンと場を沸かせる様なアイデアが湧いてくる時があった。
ある日、カフカの『変身』のあらすじを歌で表現してみようという事になり、咄嗟に僕はラップであらすじを歌った。
珍しく場が盛り上がって、ちゃんと歌詞を作って一回見せて欲しいとインストラクターに言われる。ラップの歌詞など作った事がないので、追い詰められて胸が不安でいっぱいだったが、仕事中も歌詞を考えどうにか本番にのせることが出来た。とても嬉しかった。自分が作った物が本番まで生き残ったのだ、これほど嬉しい事はそうない。
他にも1人で演じるシーンがあったのだが、こちらも追い詰められた分だけ、アイデアがどんどん出て来た。怖がる暇は無かった、アレもコレもお客様に見せたい、もっと楽しんで欲しい。そんな欲求に満ちていた。確かに実感した、追い詰められた時に良い意味で爆発する自分を。
これからも生きていく上で、芝居に限らず色々な場面で数多くの困難が待ち受けているだろう。だが立ち向かう事が出来ると思う。諦めさえしなければチャンスに変えていける。何故なら研修生の稽古で、僕は追い詰められた時は思考に囚われずに飛び込んでみると打開策が見つかるタイプだと分かったから。だからこそ、臆する気持ちがあっても覚悟を決めて困難に飛び込む事が前よりも遥かにやりやすくなった。これは研修生をやっていて一番の収穫だった。

山の手事情社はとても懐が深い。たとえ面白かったとしても本番でワンシーン丸々ラップをやらせてくれる所などそうないだろう、本当に色々な事を試せる環境だからこそ自分なりの戦い方を見つける事が出来る。公演のお手伝いや打ち上げで、先輩方とも関わる機会があるのでヒントになる話を聞けるかもしれない。そしてその戦い方は芝居以外、例えば仕事や恋愛にも応用出来る。つまり人生に応用出来るのだ。
山の手事情社の研修生をやった事で多くの成長の機会に恵まれた。稽古や公演のお手伝い、本番の為の寸劇やネタ作り、そして本番。勿論どれも妥協は許されず、本気以上でやらなければどんどん置いていかれる。正直最初はとても怖かった。今でも怖いと思う事は多い。モノマネとか公演のお手伝いとか……だが、チャレンジしてしまえば良い結果だろうが悪い結果だろうが生きる上での有意義な経験になる事は間違いない。それに恐怖は未知から生まれるものだ。飛び込んでみたら、知ってみたらいつしか恐怖を忘れていた事が殆どだった。だからこれからもどんどん何事にも飛び込んでいきたい。
研修生をやってみて唯一後悔している事がある……もっと早く山の手事情社に出会っていれば……なんて事を思ってしまう位に強く心に刻まれた1年だった。

2019年度研修生
宮﨑圭祐

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