稽古場日誌

2020年度の「劇団員になるための集中ワークショップ」を担当させていただく、中川佐織と申します。

私は、研修生たちに、「伝えたい」という気持ちを培ってほしい。

私にとって劇団山の手事情社の研修プログラムが、俳優人生の始まりの場所でした。
その頃は素人過ぎて、演技をしても「何をしているのか分からないよ!」と言われ、伝えることは、困難なことでした。
あの頃から時も経ち、次第に何かを生むことができても、それを伝える難しさにぶち当たります。
誰かに伝えたい。より伝えたい。伝わってほしい。
ある先輩に、「小鳥が雨の降り出したことを仲間に鳴いて伝える様に、俳優も世界の変化を伝えるのが仕事だ」と言われたことがあります。
それ以来、私も鳥のように空を飛び、遠くの仲間に自ら伝えにいき、本能から叫び身体が踊りだす俳優になりたいと思うようになりました。
そして研修生たちにもそうなって欲しいと思い、「何を?」「どうやって?」伝えるのか……を、掘り下げていく半年間の「劇団員になるための集中ワークショップ」にしたいです。

今年の3月に、劇団の本公演が新型コロナウイルスにより中止になり、世間では「自粛」が合言葉となり、世界全体で共通の問題意識を抱え、今も終息はしていない。対面での表現活動をすることが、世間的にも難しい時代になりました。
そんな中、「劇団員になるための集中ワークショップ」を見つけ、応募してきた研修生たち。
なんと、女性だけのメンバー。
困難な時期に演劇を欲する彼女たちの、その欲望が鳴き出すように、耳を傾けて掘り起こしていきたいです。

半年間、どうぞよろしくお願いします。

中川佐織

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