稽古場日誌

その他 高島 領也 2020/11/30

野望

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新型コロナウイルスの出現によって、世の中から演劇をやる意義が問われております。
そんな中、今年も研修生が集まってくれました。その中には、それぞれに様々な理由や決断があったことでしょう。
そこで、今回の劇団員による稽古場日誌は「何故ワタシは演劇をやるのか」をテーマとして、今年度の研修生を応援していきます。
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世の中がつまらない。

僕はそう思って上京しました。
テレビでは、政治家が不祥事を起こしただの、芸能人が結婚しただの、新しいドラマや映画の主役が誰だのという話ばかり。
学生の時の周りの人間は、誰々の事が好きだとか嫌いとか、昨日のお笑い番組見ただとか、その時の僕には非常につまらない話。

生きるってことはそういうことじゃないだろ! 何てつまらない世の中だ、もっと面白い世の中に変えてやる!

当時の僕は「全人類みんなが僕と同じになれば、平和になるし、もっと面白い世の中になる」と、本気で思っていた。
そんな事ある訳ないのに。
どうすれば全人類みんなが、僕の様になるのかを考えていた。

この日誌を書く際に、そんな頃の僕を思い出しました。
僕は人に影響を与えたくて、もっと面白い世の中にしたくて、演劇という表現活動をしたいと思っていたんだった。

 

当時考えていた様な人間には、まだなれてはいない。しかし、いつの日か僕はもっと素敵な、面白い世の中にすることの出来る俳優や演出家になりたいという野望はある。

演劇をする人達は皆、口には出さないけれども、きっと僕の様な取り留めのない、無茶苦茶な野望を持っているに違いない。今年度の研修生達もそれぞれに野望を抱いて、山の手事情社の門を叩いた筈だ。
その野望をさらに大きく、面白いものに育てていって欲しいと思う。

高島領也

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