稽古場日誌

その他 喜多 京香 2020/12/16

身体と声の葛藤

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新型コロナウイルスの出現によって、世の中から演劇をやる意義が問われております。
そんな中、今年も研修生が集まってくれました。その中には、それぞれに様々な理由や決断があったことでしょう。
そこで、今回の劇団員による稽古場日誌は「何故ワタシは演劇をやるのか」をテーマとして、今年度の研修生を応援していきます。
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もともとダンスで舞台表現をしていた私は、演劇活動を始めるようになってからよくダンス仲間に、
「なぜ演劇に没頭するようになったの?」
と聞かれます。
舞台上に立つ存在としてやる作業は同じなので、そう聞かれるといつも黙ってしまいます。
ですが今一つ言えることは、言葉の重みと出会い、それを携えて舞台に立つことの楽しさを知った事が、私が演劇に没頭する理由です。

今までは表現方法が身体一本で、言葉を発さなくても済んでしまっていたため、いきなり言葉を使うことになるとやはり不慣れで、さらに舞台上ですから、
「言葉を話すってどういうことだっけ?」
と、たったそれだけのことがわからなくなったんです。
「言葉を話す事」を一から考え直しました。

そこで出てきたのが、身体でした。
身体がどう反応しているのか、身体のどこが声を上げているのか。
問われるのは、身体の事ばかり。
身体表現が元であったプライドのためか、簡単に言葉を発したくなくなってしまいました。
芝居をする以上声を出さないといけない……
だが身体が納得する声ではない……

葛藤の中でやっと出てきた声というものは、想像以上に鮮やかで、心地よく、何より身体が納得のいくものでした。
そんな、納得のいくような声と身体が見えてきた時の喜びと言ったら、何にも代え難いものがあります。

今年度の研修生たちも、きっと身体や声が見つからずに苦しんでいる事でしょう。だからこそ存分に闘い、めげずに見つけ出して欲しいと思っています。その集団にしかない、身体と声を見るのが楽しみです。

喜多京香

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