稽古場日誌

その他 長谷川 尚美 2020/12/30

確信と核心と

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新型コロナウイルスの出現によって、世の中から演劇をやる意義が問われております。
そんな中、今年も研修生が集まってくれました。その中には、それぞれに様々な理由や決断があったことでしょう。
そこで、今回の劇団員による稽古場日誌は「何故ワタシは演劇をやるのか」をテーマとして、今年度の研修生を応援していきます。
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演劇をやっていると、あるいは舞台を見ていると、人間ってすごいなあ、あるいはバカだなあ、と思う瞬間がたくさんあるし、すごく濃厚で凝縮度のある時間を味わうこともできます。労力も手間もかけるし、生で観客と時間を共有するという、すごく贅沢なものだと思います。

でもそれは舞台の上だけではなく、実は日常でも、身近にすごいことや奇跡に近いことが起きていて、それに気づかないでいるだけなのかもしれません。いやきっとそうなのでしょう。人は自分の意識の向くものしか見えていないものですよね。

演劇は、そんないつも見落としてしまっている人間のあらゆる魅力や、醜さや、複雑さや、単純さや、すごい能力やパワーなどなどに、眼を向けたり感じたり、気が付くことのできるチャンスを与えることができると思っています。

だから、やっぱり「好き」なんでしょうね。

あるいは「好きだということに気が付いた」のですかね?

好きではじめたはずなのに、ただ好きだけでは続けられないよね、という時期が過ぎて、好きじゃないと続かないよね、という時期も過ぎて、何周も回って、

やはり「好きだからしっかりやる」ということなのではないでしょうか。

あるいは、「世界の人々が演劇にふれることで、私も世界の人々も人生が良くなり世界が良くなるという確信があるから」(笑)と言っても良いかもしれません。

そんな確信に満ちた、核心をつく、劇的かも静謐かも混沌かもしれない瞬間に、私はこれからも立ち会いたいし、携わりたいし、そういう時間をたくさんの人に味わっていただきたいのです。

研修期間にそんな瞬間がたくさん訪れますよう、そしてこの半年という時間が一人ひとりにとってどのような時間になるのか、とっても楽しみです。

長谷川尚美

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