稽古場日誌
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新型コロナウイルスの出現によって、世の中から演劇をやる意義が問われております。
そんな中、今年も研修生が集まってくれました。その中には、それぞれに様々な理由や決断があったことでしょう。
そこで、今回の劇団員による稽古場日誌は「何故ワタシは演劇をやるのか」をテーマとして、今年度の研修生を応援していきます。
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僕は昔から何かになりきる事が好きでした。
それをプロとしてやりたいと考え上京したのですが、やはりキツイと思うことは多いです。
全身を使って芝居をするので、身体の疲労で辛い。稽古で自分と向き合ったりダメ出しをもらうと、鬱々とし良からぬ思考になる。そんなことからついついストレスを溜めてしまいます。
苦しい事が待っているとわかっていながら何故演劇を続けるのか。それは芝居が好きだというのもありますが、何よりも人の笑顔が好きだからです。
僕の初舞台は2018年に山の手事情社の協力の元、大田区民プラザで行われた下丸子×演劇ぷろじぇくと2018 区民参加劇『仮名手本忠臣蔵』でした。
あまり大河ドラマや歌舞伎等を観た事がない僕にとって、馴染みのない台詞回しや、山の手事情社の演劇スタイルを取り入れた演出もあって苦戦しました。
しかし、共演者の皆さんが明るく笑顔でエネルギッシュに取り組んでいるのを見ていると、苦しい状況でも気力が湧いてきた事をよく覚えています。
そして何よりも幸せなのは、終演後のお客様と面会する時間です。お客様と役者が語り合う瞬間には僕も含め、皆が清々しい笑顔になっています。それを見る度に僕は今まで関わってきた人達に対する感謝の気持ちで胸がいっぱいになり、こんな幸せな瞬間があるのかと強く感じます。
作品を作るには、生々しく泥臭い苦しみが伴います。きっとどの創作の現場でもそうなのでしょう。その苦しみが作品のクオリティを高くし、お客様を笑顔にするような作品にする事ができるのだと思います。
本番を終えた後にお客様、仲間、自分が笑顔になれると信じて僕は演劇を続けているのです。
現状はとても厳しい情勢です。苦しい日常は続いていますが、この先また以前と同じように演劇ができるようになった時、僕が一人の演劇人として人の心の潤滑油になれる様、気張って精進していきたいと思います。
宮﨑 圭祐