稽古場日誌
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新型コロナウイルスの出現によって、世の中から演劇をやる意義が問われております。
そんな中、今年も研修生が集まってくれました。その中には、それぞれに様々な理由や決断があったことでしょう。
そこで、今回の劇団員による稽古場日誌は「何故ワタシは演劇をやるのか」をテーマとして、今年度の研修生を応援していきます。
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その時々の必要性に駆られて自分の身の振り方を決めていった結果、こうして演劇の世界に身を投じています。そもそも演劇がやりたい! という一心で真っ直ぐにこの世界に辿り着いた訳ではありません。
まず思い当たるのは、4年ほど会社に勤めていた時期。とても温かい会社でしたし、物を作る仕事でしたので性にはあっていたのですが、どこまで行っても「儲かるか儲からないか」の判断基準に辿り着くことが多く、つくづく嫌気がさしていました。会社に勤めるという事に根っから向いていないのでしょう。
その時期によく遊んでいた仲間の二人が、急に「お笑い芸人になる」と言い出しました。そうか、と。そして半ば反射的に「じゃあ俺は俳優になるわ」と返しました。深い意味は無かったように思います。強いて理由をあげるなら、面白い人に出会えそう、という期待があったように思いました。
そうしてお芝居の世界に踏み込んで、学校に行きお芝居を学んでいた中、様々な劇団や事務所に出会いました。その中で異様な気配というか、「なんだこれは」と衝撃を受ける劇団と出会い、今この山の手事情社で活動をしています。有難いことに、この劇団で活動を始めてから「なんだこれは」という衝撃と出会う場面が多くあり、嫌気もさすことがあろうとも辞められずに続けています。
演劇活動を続けていると、とにかく面白い人や物や表現に出会います。また、新たな出会いが無くとも付き合いの長い友だったり、使い慣れた道具であったり、通いなれた道だったりが、以前とは全く表情の違うサマを見せるときがあります。その新鮮さが、自分の中の淀みの様なものを清らかなものに変えてくれたりするのです。私が演劇を続ける理由は、その辺りにあるように思います。
河合達也