稽古場日誌

池上show劇場【PREMIUM】 越谷 真美 2021/10/12

「骨」のない日々

つい先日、母が倒れて入院しました。

結構な重症にも関わらず、コロナ禍のため面会禁止で入院した日以来母と会えていません。倒れる前までの日常がぷっつり途切れてしまったのに、日が経つにつれ母が倒れたことがまるで現実ではなかったかのような気がしてきて、どこか旅行にでも出かけてるんじゃないかと錯覚します。

『骨』の主人公道子も、こんな感じなのかなって、少しわかったような気がしました。

夫は、戦死したらしい。でも、旦那の骨さえ返ってこない。本当に死んだのか、まったく現実感がない。『骨』は、そういう実感のない感覚をひきずったまま、厳しい現実を生きる女性のお話です。

昨年、志村けんさんや岡江久美子さんが亡くなったニュースに触れたときの、あの、いつまでも信じられない感じ、近いかもしれません。

あらすじを見ると、昭和の、戦後すぐの、男に身を売るなんて、遠い時代の話に思われるかもしれませんが、いやいや、私たちが生きる世界のどこか片隅で起きていることなのかも。そう感じていただける作品にできたらと思っています。

越谷真美

**********

『骨』あらすじ

26歳の道子は、街にでて男をひろう。
夫は沖縄で戦死して、戻ってきたのは空の骨箱だけだった。
道子は身体を売って得た金で、寝たきりの父親と、病人の弟勘次と、7歳の娘笑子を養っている。
12月の或る雨の朝、弟は死んだ。弟の骨壺は、案外重かった。
戦後まもなく発表された、林芙美子の短編小説。

**********

劇団 山の手事情社 公演『池上show劇場【PREMIUM】』

構成・演出=安田雅弘
日程=2021年11月5日(金)~7日(日)
会場=山の手事情社アトリエ

【PREMIUM】公演情報詳細は こちら をご覧ください。
【DELUXE】【PREMIUM】は 配信 でもご覧いただけます。

『池上show劇場【PREMIUM】』1 『池上show劇場【PREMIUM】』2

稽古場日誌一覧へ