稽古場日誌

ほんのりレモン風味 佐々木 啓 2022/01/28

友人との話

僕には小中学校で特に仲の良かったN君とI君という二人の友人がいる。
今でも交流のある大切な友人だ。しかもこの二人とても個性的でオモシロイ奴らだった。

N君は普段は無口で静かなのに一度喋りだすと軽妙なトークで聴く人を魅了する。知識も豊富で小学生なのに何故か井上陽水や南こうせつといった一昔前の歌手にやたらと詳しかった。それから絵がとても上手で手先も器用だった。よく漫画やボードゲームを自作していた。

I君はとても頭が良くて勉強の成績が良かった。同い年なのに妙に大人びていた。当時はまだそこまで普及していなかったインターネットにも詳しく、ニコニコ動画や2ちゃんねるといったツールにも早くから気が付き楽しんでいた。それから何かに熱中すると成果が出るまで続ける辛抱強さがあった。ペン回しにハマった時は見たことが無い技を披露してくれたし(例えば三回転や四回転の技など)、ルービックキューブにハマった時は二分以内に全面を揃える事に成功していた。あと小さい頃から市民オーケストラに参加していてヴァイオリンが弾けた。

そんな凄い二人と不思議と妙に気が合い、学校だけではなく塾でも僕を含めた三人でつるんでいた。
が、僕だけ個性や得意な事がなくて地味だった。だから何人かの生徒からは「なんで佐々木がN君やI君と一緒にいるんだろうか?」「佐々木って声が大きいだけで大して面白くないよね?」「この金魚のフン野郎!」などと言われたものだ。

ある日、下校中に僕がI君と話しているとI君のことをペン回しの師匠と慕っている男子生徒が「おい、佐々木! なんでお前ごときがI君と話してるんだよ! 邪魔なんだよ、どけ!」とすごい剣幕で怒鳴ってきたことがあった。流石にその時は少し悲しかった。
その日は一人で帰ろうと思ったがI君がわざわざ一緒に帰ってくれた。ありがたかった。一旦帰宅し、準備を整えて塾に行く。N君とI君も同じ塾に通っているので再び顔を合わせる。授業が終わったら三人で自転車をこぎつつ雑談をしながら帰る。途中N君の家の前で学校や塾の愚痴や怖い話などを二時間くらい話して解散しそれぞれの帰途に就く。この雑談時間が一日の中で一番楽しかったかも知れない。

これといって青春っぽい思い出はないけど、こんなさりげない日常が辛いことも楽しいことも含めて僕にとっての青春だったのかなぁ、と今となっては思う。

青春って楽しいこともあるし辛いこともある。甘いこともあるし、すっぱいこともある。意外と複雑なテーマだ。
ニュージェネレーションたちがどんな青春を舞台上に出現させてくれるのか。
今から楽しみでしょうがないです!

佐々木 啓

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『ほんのりレモン風味』omote

ニュージェネレーション公演『ほんのりレモン風味』
日程:2022年2月23日(水・祝)~27日(日)
会場:大森山王FOREST

詳細は こちら をご覧ください。

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