稽古場日誌

馬込文士村 空想演劇祭 河合 達也 2022/12/10

様式を用いた演技を映像に収める異質さ

山の手事情社の《四畳半》という演技様式は異様だ。

不自然に身体を歪めてセリフを語るし、急に時間軸や状況が変わる。稽古場や舞台上で見る分には「はあ、こういうものか」と何となく受け入れられるのだが、映像演劇として様々なロケ地に飛び出して、日常の風景の中で《四畳半》の演技を行うと、その異様さが際立って見えてくる。《四畳半》を見慣れている僕自身も、画面を通してその異様な演技を見ていると、びっくりするというか面食らう。「……なんだこれは」という異物感を呑み込めないままその芝居を見ることになるのだが、これが案外不快な感覚ではなく、見終わる頃には不思議と消化ができ、なるほどそういう事か、と充足感を得られる。

『千代と青児』の撮影に加わりながら、この異様な演技様式の必然性を思索するのだが、それはもう宇野千代にしろ東郷青児にしろぶっ飛んだ人物だから、ということに尽きるように思う。東郷青児は心中事件を起こした一ヵ月後に宇野千代とくっつくし、宇野千代も東郷青児に心中事件というデリケートな話題を突撃取材し、あまつさえ青児の家に住み着く、という大胆不敵をやってのけてしまう。自分自身に置き換えて考えてみても、いや無理無理! と思う事を、千代と青児はやってのけてしまう。そんな人物像を20分の短尺で表現するには、とてつもない情報量を凝縮して表現しなければいけない。そう考えるとこの異様な演技様式がしっくりくるのだ。

パッと見て、ムムムッ! と異様さを感じる映像作品かもしれませんが、手放すことなく見てみて下さい。気付かぬうちにその魅力に惹かれているに違いありません。

河合達也

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OTA アート・プロジェクト
馬込文士村 空想演劇祭2022 作品上映&[同時収録]生ライブ

日時=2022年12月17日(土) 11:00開演/15:00開演
会場=大田文化の森 多目的室

チケット購入
https://yyk1.ka-ruku.com/ota-s/showList

【配信情報】
https://www.ota-bunka.or.jp/magome-engekisai/

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