稽古場日誌

馬込文士村 空想演劇祭 松永 明子 2023/02/06

『おたふく』のこと

山口笑美さん演じるおしずの妹、おたかを演じました。いま振り返ってみると、共演させていただいた先輩方、そして演出の安田さんと濃い創作時間を過ごしたことが思い出されます。

劇中、姉の不貞を疑う義兄に驚き、おたかが涙を流す場面がありました。稽古が始まったばかりでどう演じるか悩んでいた頃、「不完全でもいいから君の演技プランをまず示してごらん。相手役の山本さんは受け止めてくれるから。」と安田さんから助言がありました。
そうか、と背中を押され、次の稽古では思い切って「わぁぁぁっ」と泣き叫ぶ演技を試してみたところ、稽古場にわっと笑いが洩れました。どうやら方向性がおかしかったらしく義兄役の山本芳郎さんから「その泣き方じゃ外国人だよ!」とツッコまれてしまいました。泣き方に日本人とか外国人とかあるのか……と感じ入った覚えがあります。山本さん、あの時は驚かせてごめんなさい。
山本さんはシャイな方で言葉は多くありませんが、その後も幾つか大切な演技の気づきをくれました。

もうひとつ印象的だったのは、安田さんから撮影の直前まで丁寧に演技のイメージを説明していただいたことです。撮影の順番を待って、ドキドキしながら何度も台詞を繰り返しているところへ、そっと話しかけられました。前日の深夜まで映像ディレクターの米本直樹さんと打ち合わせていたそうで、みんなでどんなシーンを目指しているのかを話していただきました。

1つのシーンの撮影が終わると、共演者同士で次のシーンの確認や打合せをしたり、演出助手の鹿沼玲奈さんが寒くないようにとすぐさまマットを敷きに駆け寄ってきてくれます。

たくさんの人の、たくさんの想いを乗せて作品が作られていることを肌で感じた体験でした。

この度『千代と青児』に併せて『おたふく』も再び配信されるそうで嬉しく思います。山の手事情社のベテラン俳優が勢揃いした、とても贅沢な作品です。山本周五郎氏の文章も優しく温かいです。どうか多くの方の目に触れますように。

松永明子
※ 2021年度作品『おたふく』出演

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OTA アート・プロジェクト『馬込文士村 空想演劇祭2022』

■視聴券
2022年度制作(2作品セット) 1,000円(税込)※劇団 山の手事情社『千代と青児』含む
2021年度制作(4作品セット) 1,500円(税込)※劇団 山の手事情社『おたふく』含む

■視聴券販売期間
2022年12月15日(木)~2023年2月14日(火)23:59

■購入・視聴サイト
Confetti Streaming Theater(カンフェティ・ストリーミング・シアター)

詳細情報や予告編の視聴は、特設ページ をご覧ください。

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