稽古場日誌
デカメロン・デッラ・コロナ 高島 領也 2023/02/28
『デカメロン・デッラ・コロナ』
「デカメロン」はわかる、作品名だ。
「コロナ」もわかる、疫病だ。
「デッラ」ってなんだよ。
【della】イタリア語 前置詞の「di」に冠詞の「la」がついた部分冠詞の単数形。
英語の「of the〜」と同じ意味らしい。
なるほど、納得がいかない。
そこで『デカメロン・デッラ・コロナ』というタイトルにおける幾つかの考察をしてみようと思う。
直訳だと「コロナのデカメロン」
『デカメロン』という作品はペストに脅かされる事で生まれた。それをコロナに置き換えた訳だ。
「deracinate」という英語がある。
「隔絶する」という意味らしい。
これを略したのが「デッラ」かも知れない。
そして「デカメロン」は「10日間」という意味。
「10日間コロナを隔絶」
つまり隔離療養という訳か。
いやそもそもデッラは外国語ではないのかも。
名古屋弁に「でら」という言葉がある。「凄い」とか「とても」という意味がある。
そして「デッラ」は「でら」の強調形。
『デカメロン・デッラ・コロナ』は、
「10日間とってもコロナ」という意味なのか?
つまりは緊急事態宣言の事だろうか。(実際は10日間ではなかったけども)
まあ、わかって言ってるんですけどね。
元々の『デカメロン』はまさに「デカメロン・デッラ・ペスト」という内容です。
ペストの脅威から逃れるために、若い男女10人が郊外の別荘へ10日間避難する。
そこで1日1人1話、計100話が10日間の間に語られる。
しかし、作者のボッカッチョは『デカメロン』の冒頭にこそ、ペストの様子を克明に描写してはいるが、それ以降の物語本編にはペストは話題にすらならない。
登場人物が感染したり、死者を悼んだりするシーンは無い。それはある種不自然なまでに。
10人の男女に対して、私は思った。
「外は大変なのに呑気に10日間の100物語ですか!? ありもしないホラ話にうつつを抜かして、喪に服す気は無いのか!!」
しかし、自分の緊急事態宣言中はどうだったろうか。
自分にとっての「10日間」はどうだったろうか。
別荘ではないが、自宅でずっと過ごしていた。
死者を悼んだろうか。
死を考えただろうか。
生きる事を考えただろうか。
無為に過ごしていなかったろうか。
SNSで拡散される誤情報に右往左往していなかったか。
現代人のフェイクニュースだらけの「10日間」に比べれば、10人の彼ら彼女らの100物語は実に建設的だ。
彼ら10人の「10日間」はこの『デカメロン・デッラ・コロナ』で蘇るのかも知れない。
それと同時に、私たちの「10日間」の先を『デカメロン・デッラ・コロナ』で見据えてもらいたい。
高島領也
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劇団 山の手事情社 公演『デカメロン・デッラ・コロナ』
日程=2023年3月24日(金)~26日(日)
会場=池上会館 集会室
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公演情報は こちら