稽古場日誌

かもめ ルーマニアツアー 川村 岳 2023/07/19

ツアーを終えて

今回のツアーは劇団としての地力を計るものだったと思う。
作品は再演とはいえ、大きく作り変える箇所が多く、演じている立場としては新作のような感覚があった。創作期間も短く、後半に一気に色々なもの(演技様式・台詞・小道具・セット)が決まり、俳優の対応力が求められることが多かった。
作品は通常一旦出来上がったものに慣れて、その後客観的に外から見て修正するが、その時間もあまりなく、フワフワした気持ちのまま旅立つことになりました。
※実際本番前に「今回バッチリ!」ということはあまりありませんが……。

しかし、ルーマニアに着いてからの稽古で色々腑に落ちることがあり、一気に作品が整ったという印象があった。

それは海外にいるといやでも実感する「自分は日本人」という感覚。
日本人が特別、という事ではなく日本人の身体を持っているという事実。それを生かさないでどうする、という覚悟。
『かもめ』という作品はよく知られているので、観客が見たいのはストーリーではなく、どんな俳優の身体がそこにあるのかということだと思う。

稽古の過程で気付かぬうちに演技の実(じつ)が薄くなってはいないだろうか。ライブでやらなくちゃ。トレープレフの台詞を借りると「魂のなかから自由に流れ出すからこそ」ということだろうか。

不思議なことに、シビウでの本番は今までになく静かでアグレッシブな舞台になっていたと個人的には感じました。

川村 岳

※ 舞台写真:Anca Nicolae(写真提供:シビウ国際演劇祭)

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7/9に帰国後の生配信を行ないました。アーカイブをご覧いただけます。

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