稽古場日誌

かもめ ルーマニアツアー 越谷 真美 2023/07/24

13年ぶりの演劇祭

ツアーが終わって数週間、帰国してあっという間に日常生活が戻ってきて、ルーマニアでの日々が早くも遠い出来事だったような気がします。

『かもめ』という演目は2019年に初演したもので今回は再演でしたから、当初こんな密な稽古になるとは思いもよりませんでした。演出的にも、個々の俳優の演技も4年前とはまた違ったものに生まれ変わったと思います。

お芝居のことに気がとられて感慨にふける余裕は全くなかったのですが、実は私は13年ぶりのシビウ国際演劇祭でした。2009年と2010年に参加したときは、公演したこともですが、町中に劇場があり、観たことない感性の芝居や俳優を目の当たりにして、そこに集うひとたちとお酒を飲んで、ダンスして、人間ってすごいなあ、世界って広いんだなあって感動しました。私にとってそれはその後大きなモチベーションとなる経験でした。

日本でもいつかこんな環境を実現したい。
私もこんなすごい俳優になりたい。

ほんと馬鹿みたいにそれを頼みにここまでやってきました。
今回久しぶりに訪れても、シビウはやっぱり芝居をやる人間にとっては桃源郷のような環境だと思いました。しかし、自分が13年何をやってきたか考えると、正直、なんと果てしの無いことだったんだろうかと思う自分がいます。このままでいいんだろうか。久しぶりの海外ツアーでそんなことに気づくなんて、どうなんだろうと思いますが、きっと何か変わらなくちゃいけない。これはこれでこれからのために必要な気づきだったと思っています。

私が演じたポリーナの台詞に、
「私たちの時は過ぎていきますもの」
という台詞があります。
彼女の幸せは過去にあります。夢見たことがどんどん遠ざかっていく。
アルカージナは返します。
「仕方のないことよ」

ツアーが終わって、アルカージナの台詞がやけに沁みてきて、演劇がある人生はやはり豊かだなあなんてことも思いました。

いいお芝居をつくりたい。出会いたい。

また、歩き出します。

越谷真美

※ 舞台写真提供:Sunlight Theatre(サンライトシアター)

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7/9に帰国後の生配信を行ないました。アーカイブをご覧いただけます。

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