稽古場日誌

かもめ ルーマニアツアー 河合 達也 2023/07/26

『かもめ』ルーマニアツアーを終えて

今回のツアーで僕は照明スタッフ助手として同行致しましたが、現地の劇場スタッフ並びにボランティアスタッフにとても助けられした。
シビウ国際演劇祭にはたくさんのボランティアスタッフが参加されており、僕たちの『かもめ』にも、日本人スタッフが何人かついてくださいました。稽古場に持ち込む道具の移動に必要な車の手配や、現地スタッフとの通訳、また手数料の安い両替所を教えていただくこともありました。
稽古場に到着したときは、恐らく現地の学生ボランティアスタッフが稽古場を案内して下さいました。ルーマニアでは現地の言葉以外に英語も日常会話で使われており、僕も中学で習うレベルの英語は理解できましたので、ボディランゲージと合わせて会話しました。

劇場に入ってからも多くの方が英語で話されており、照明担当の方に仕込みをお願いするときにも英語が使われました。シビウのスタッフもティミショアラのスタッフもとても凄腕の方で、拙い英語でのオーダーも滞りなく対応し、仕込み上のトラブルが起きることなく上演を行うことができました。
シビウの照明担当のジョニーは剽軽な方で、仕込み中に大きな脚立を出すのを手伝ってほしいとお願いした時も「オーケー! じゃあ僕はおうちに帰るね!」と冗談で劇場から出て行こうとするような人でした。もっとも僕は仕込みに必死で冗談を素直に受け取れず「ちょっとちょっと!」と大慌てしてしまいました。
ティミショアラの劇場は18世紀からある劇場で国立のオペラ歌劇場と併設されていて、とても年季入っていました。昔の映画に出てそうな、人の乗れないエレベーターを使って美術道具を上げ、いくら水拭きしてもすぐに汚れ始める舞台を掃除し、それでもよく使い込まれている劇場だったようで、大きな問題もなく『かもめ』を上演する事が出来ました。

どちらの都市でも盛大な拍手とスタンディングオベーションでカーテンコールを迎えることができました。作品の楽しみ方がそれぞれの都市で違ったのが印象的で、その様子を客席で観劇していたのでお伝えしたいと思います。

シビウのゴングシアターで行った公演では開演前から上演中も含めてずっと客席がざわざわとしていて、座席ではない所に座って「5分だけここで見させて!」という人がいたり、俳優が演技している中でも席を移動する人がいたりしました。全ての座席が埋まり、さらには階段で座って見ている人を掻きわけて舞台近くの壁際まで進み出るおじさんもいました。それでも観客同士で場所を譲り合い、上演中に横を通る人にも笑顔で荷物を寄せてあげ、全員で作品を楽しむ空気がシビウのゴングシアターには満ちていました。

ティミショアラのジャーマンステートシアターはシビウと真逆で、とても静かな中で公演が行われました。客席がとても暑く、上演前までは持っていた冊子を団扇代わりに仰いでいる人が多くいましたが、上演が始まるとそれがパタリと止み、客席自体の傾斜が大きく見やすい会場だったこともあり、上演中に席を移動する人は一切いませんでした。観客全体が息を呑んで食い入るように『かもめ』を観劇していたように思います。

楽しみ方はそれぞれの都市で違いましたが、どちらの都市も演劇に対する想いは深く、ルーマニアという国で作品を上演することができたのはとても幸せな事だと感じました。
国境を越えて多くのお芝居を愛する方々と触れ合い、演劇祭を盛り上げることができとても光栄に思います。関わって下さいました多くの皆さまに多大なる感謝を申し上げます

河合達也

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7/9に帰国後の生配信を行ないました。アーカイブをご覧いただけます。

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