稽古場日誌

稽古場 宮﨑 圭祐 2023/11/08

お祭り

僕が演劇に惹かれているのは、演劇とお祭りに似たものを感じているからだと思う。

僕は幼少期に母の実家のお祭りによく連れて行ってもらっていた。母は兄妹も多く家の中はとても賑やかで、お祭りが本格的になると、親戚も家に集まりどんちゃん騒ぎだった。僕も時間を忘れて皆と騒いだ。外に出て、家の前や近くの河川敷に並んだ出店を母や叔母と一緒に買い物をしながら巡る。綿菓子やジャンボフランクを買って食べ歩いたり、ピカピカ光って音の鳴る剣で遊んだ。最後は河川敷で花火を見る。花火の終わりはお祭りの終わり。花火の音が別れのカウントダウンに聞こえる。とても寂しがり屋だった僕は泣いて帰りたくないと騒ぎ、母を困らせていたのを覚えている。
幼少期に感じた寂しさを思い返すとなんだか愛おしい。終わってしまうからこそ大切な時間だったのだ。今でもお祭りに行くと帰り際に幼少期の寂しさがじんわりと優しく僕の心を包む。大人になるとその良さが分かる。寂しいのも悪くない。そんな寂しさが癖になりついついお祭りに足を運んでしまう。僕はお祭りが大好きなのだ。

今年3月に行なった山の手事情社公演『デカメロン・デッラ・コロナ』は正にお祭りだった。
御輿担ぎの練り歩きの様に激しく進む稽古、花火の様に派手に打ち上げてあっという間に過ぎる本番、出店の様に派手なセットを見るとワクワクする。後片付けが終わった劇場はまるでお祭りが終わった後の街や神社の様な物足りなさを感じる。締めの打ち上げでは先輩、後輩達と思う存分語り合う。どんなお祭りよりも賑やかで凄まじい時間だが、終わってしまうとやはり寂しさに包まれ、またお芝居をやりたい気持ちが湧いてくる。お祭りと同じ様に演劇は僕の心を捉えて離さないのだ。

山の手事情社が次に主催する作品はどうなるのか。まだわからないが、大勢の心を奮わせるのは間違いない。僕が大好きなお祭りの様に。

宮﨑圭祐

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