稽古場日誌

僕らはみんな逃げている 藍葉 悠気 2024/01/29

恐ろしくも心地のいい世界にて

こんにちは。
ニュージェネレーションの稽古によって、20kg痩せた藍葉です。
これは果たして、何かから逃げた結果なのか。
それとも、何かに立ち向かった結果なのか。
その、どちらとも言えることなのか。
少なくとも前より健康診断から逃げなくてもよくなったのは、いいことだと思います。

さて、今回のニュージェネレーション公演のタイトルは『僕らはみんな逃げている』です。

「逃げている」という言葉から思い浮かぶのは、やはり「努力」や「忍耐」といった耐え忍んで我慢するような行為に対する拒絶、逃避というイメージです。
自分で言うのもなんですが、まさに僕のこれまでの人生は、そういった努力や忍耐を避けて、遠ざけて、逃げ続けてきた人生であるという自負があります。
ひと言で言って「やりたくないことはやらない」を徹底してきました。
にも拘らず、今日まで、それなりに社会の中で生きてこられたのは、運が良かったことが半分、もう半分は如何にして「やりたくないことをやらずに生きていくか」ということばかりに頭をひねってきた結果だと思っています。

要するに「誤魔化しながら生きる」ということですが、そういった、ある種のずる賢さが僕の中にはあります。

それは時に、口先だけのはったりで自分を良い様に取り繕うことかもしれませんし、自分を自分以上の大きさに見せ掛けて、他者や社会を打算的かつ利己的に利用することかもしれません。
その、僕の中にあるずる賢さは自分自身の価値を下げることもありますが、同時に、様々な場面でそのずる賢さによって助けられてきたという感覚もあり、最早、切っても切れない己の性質であると受け入れている部分もあります。

ただ、だからこそ、今、改めて思うのは「誤魔化せないことは心地いい」ということです。

まさにそれが今回のニュージェネレーションという環境でした。
自分のできることが全て、やったことが全て、という演劇の世界は、これまで長い間、小手先の口八丁手八丁だけでやり繰りし、事あるごとに言い訳ばかりが巧くなっていた自分にとって、本当に得難く、やり甲斐があり、何故か不思議と気持ちが楽になる感覚すらありました。
ある意味で、それは「逃げ道がない世界」ならでは、と言えるかもしれません。
そもそも逃げるという選択肢がないこの世界では、もう如何にして逃げようか、ということに頭をひねる必要がなく、それはとても楽なことで、心地がよく、そして、何よりも恐ろしいことなのです。

最後に、今回のニュージェネレーション公演のチラシのデザインは、僕が担当させていただきました。
シマウマの死体は「逃げきれなかった者の末路」と「向き合いたくない現象」を象徴し、小人の群れは多種多様な「逃げ方」を表現しています。
じつは途中の段階では、もっと小人の群れはシマウマの死体を勢いよく踏み越えて逃げている様にデザインしていたのですが、それに対して演出の谷さんから「それは藍葉の逃げ方だから、もっと他の人だったらどう逃げるかを考えてデザインする様に」と指摘されたことが、妙に嬉しいことでした。

ニュージェネレーション公演、是非ご観劇いただけたら幸いです。
何卒よろしくお願い致します。

藍葉悠気

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ニュージェネレーション公演『僕らはみんな逃げている』
構成・演出=谷 洋介

日程=2024年2月28日(水)~3月3日(日)
会場=山の手事情社アトリエ

詳細は こちら をご覧ください。

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