稽古場日誌

子供のころ、毎週日曜日午前中は、習字教室に通っていました。何故か、親は通わせたくなかったのですが、おばあちゃんが後押ししてくれて、通えることになりました。自宅から習字教室に行く途中におばあちゃん家があり、行くときは必ずおばあちゃん家によって、「行ってくるね!」と声をかけてから教室に向かっていました。

ある時、習字教室に行きたくない日が訪れます。それは、習字教室の年上男子に、イジメというほどではないですが、からかわれるようなことが続いたからです。自分で行きたいと言い出して始めたので、行きたくないことを親に言うのは、理由とともにカッコ悪いことのように思えて、モヤモヤしたままガマンして教室に向かいました。

いつもように途中でおばあちゃん家に寄ると、おばあちゃんは留守でした。
急に「おばあちゃんが留守だから習字教室には行かないでよい」という妙な理由が芽生え、とても説得力を持ちます。

習字教室からほどよい距離にある、一軒家と一軒家の間の狭い路地に入り、誰にも見られないことを確認して、壁に向かって指で習字を書くマネを何回もして時間をかせぎ、習字教室に行ったテイで、おばあちゃん家に引き返します。

おばあちゃんは在宅していました。時間をかせいだつもりでしたが、実はそんなに経っておらず、習字教室に行っていないことが、おばあちゃんにバレてしまいます。
なぜ行かなかったのかと問われ、「おばあちゃんが留守だからだよお。男子がからかうからやだよお。」と泣きながら言うと、おばあちゃんは「ほら、あべ(方言:→行くよ)」と私の手を引いて習字教室に一緒に行ってくれました。

その後小学校卒業まで通うことができましたが、その時の、ウソをついた後ろめたさと、おばあちゃんと一緒に習字教室に行ったことが恥ずかしかったこともあり、いまだに忘れられません。

おばあちゃんのような、逃げ場であり後押ししてくれる存在って、大事ですね。
ニュージェネレーションの公演まで、そんな存在でいられるよう、心がけたいと思います!

小笠原くみこ

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ニュージェネレーション公演『僕らはみんな逃げている』
構成・演出=谷 洋介

日程=2024年2月28日(水)~3月3日(日)
会場=山の手事情社アトリエ

詳細は こちら をご覧ください。

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