稽古場日誌

僕らはみんな逃げている 諫山 龍眞 2024/02/02

時間が過ぎるということ

山の手事情社アトリエの1階には、大きな空気清浄機が鎮座しています。春から秋、彼は冷たい風を吐き出すので、稽古の初めにランニングを終えると、目の前に陣取って汗を引かせるのが僕のルーティンでした。季節は流れて冬、寒さに体を震わせながら稽古場に座っていると、相変わらず冷たい風を送ってくる彼がそこに居ます。いつしか僕にとって彼は、近づきたい対象から逃げる対象になっていました。

僕には、小・中学校と一番仲の良かった友人がいました。お互い中学卒業のタイミングでスマホを買いました。高校は違ったのでLINEで連絡を取りあっていたものの、絵に描いたようなコミュニケーションの齟齬の連続によって、関係が疎遠になってしまいました。スマホを介することで、今まで認識していなかった嫌な部分や、我慢の限界を超えるものがお互いに見えてしまったのだと思います。そうして、その友達との関係を修復することからも逃げてしまいました。最近の若者言葉でいうと、「蛙化現象」というものでしょうか。

山の手事情社の稽古では、時間の流れによって相手との関係性がどう変わったのかを考える機会が多くあります。理解が深まって、避けるようになって、好きになって、元々嫌いだったものが更に嫌いになって……。

今回のニュージェネレーション公演は、構成演劇です。一瞬一瞬の心の移り変わりを、万華鏡のように切り替えながらお見せします。これはひとつの戯曲を辿るのではなく、俳優たちがアイディアを出し合い、意見がぶつかり合わないと実現できない表現方法です。

是非とも皆様と会場でお会いし、披露できることを楽しみにしています。

諫山龍眞

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ニュージェネレーション公演『僕らはみんな逃げている』
構成・演出=谷 洋介

日程=2024年2月28日(水)~3月3日(日)
会場=山の手事情社アトリエ

詳細は こちら をご覧ください。

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