稽古場日誌
僕らはみんな逃げている 平戸 優希 2024/02/07
2月に入って集中稽古が始まり、自主練習やニュージェネレーションメンバーと意見を出し合う時間も増えてきた。
私はこのタイミングでイライラが止まらない。
例えば、《ルパム》を作っている時。
《ルパム》は山の手事情社オリジナルのダンスだ。
振り付けはどんなものを使うのか、どんな感情で動くのかをメンバーで話し合い、1から形にしていく。
この《ルパム》は、振りのディテールを揃える必要があり、皆それぞれ動きのこだわりがある。
この話し合いの時、なるべく手短に分かりやすく説明することが大事なのだが、私はこれが上手くいかない。
腰の高さ、指先の形、表情など、どうしてその動きになるのか、なぜその動きがいいのか、頭で思い描いているものをうまく言葉にして伝えることが出来ない。
他の人の意見はすぐにイメージの共有ができるのに、なぜ自分の言っていることは伝わらないのだろう。なぜ時間がかかるのだろう。
だんだんと、自分の言葉や考えに自信がなくなってくる。
だからといって、人の意見に乗るだけでは何だかサボっているような気がしてしまい、どうにか無理矢理意見を絞り出す。
それが採用されることは殆どないが、かろうじて、創作活動に取り組んでいるというプライドは保っているような気になっている。でも、やはり手応えは感じられず、なんだかモヤモヤとした気持ちが渦巻いたまま時間が過ぎていく。
自分へのイライラが止まらない。
あぁ、本当は今すぐ休んで旅行に行きたい。
ご当地グルメを食べて、日本酒を飲んで、へべれけになって眠りにつきたい。
ちょっとだけでいいから逃避行してきたい。
しかしそんな時間はもうない。このメンバーで舞台に立てるのは今しかない。
どれだけ苦しかろうが、考えて考えて、泣きながら考えて形にして、そうして舞台で見て貰えるものにするのだと腹を括るしかないのだ。
逃げてる場合じゃない。
自分と、ニュージェネレーションメンバーと、尽力してくださる劇団員の人たち、全てを信じて、心を刺激する作品をお届けしたいと思っている。
平戸優希
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ニュージェネレーション公演『僕らはみんな逃げている』
構成・演出=谷 洋介
日程=2024年2月28日(水)~3月3日(日)
会場=山の手事情社アトリエ
詳細は こちら をご覧ください。