稽古場日誌

僕らはみんな逃げている 谷 洋介 2024/02/10

演劇に逃げ込んだ私

『僕らはみんな逃げている』というタイトルが浮かんだのは、ある日の朝、トイレにはいっているときだった。
こんな適当なタイトルでいいのかなあ、と思っていたが、今年度のニュージェネレーションメンバーはどことなく“逃げている”感じがある。そして今の世の中はそういう雰囲気が漂っている。

何よりも私自身、社会から演劇に逃げ込んできた、と思っている。

大学4年生のとき、就職活動で、ある企業の面接を受けることになった。
その会社から面接日を指定されたが、私はその日はバイトが入っていたので、別日を指定した。
後日、面接に行ったら、バイトを優先するとは何事だ、とめちゃくちゃ怒られた。
私は確かにそうだ、と思い、黙り込んでしまった。
しかし私としては、そのバイト先がとても好きだったし、店長にはしょっちゅうご飯をおごってもらったりと色々お世話になっていて、その日はどうしても人が足りなくて、入ってほしいと言われてシフトを入れていたので、バイトを優先したのだった。
面接は説教で終わり、その日にしてもらえず、一度考え直してください、とのことだった。
そのとき私は、社会に出て働くのは無理だと悟った。
あとになって思った。そこで理由を丁寧に説明すればもしかしたらわかってくれたかもしれない。面接官に「あなたはこの状況で仕事休めますかー!!」と叫べばよかったのか、などと妄想もした。

社会とはなんだ!?

大学卒業後、そんなモヤモヤを心の奥に秘めつつ、プラプラしていたときに出会ったのが演劇であった。ここが私の居場所かもしれない、と思った。
普段の日常生活で押し込めている感情や不満を爆発させ、表現するのが役者だと思っている。山の手事情社ではそれができると思った。

演技をする上で、まずはそういう不満をもとに暴れられるかが試される。
ニュージェネレーションの稽古はそれの連続だ。
『僕らはみんな逃げている』はどことなく“逃げている”今年度のメンバーと、演劇に逃げ込んだ私との社会に対する戦いなのである。

ご来場お待ちしています。

谷 洋介

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ニュージェネレーション公演『僕らはみんな逃げている』
構成・演出=谷 洋介

日程=2024年2月28日(水)~3月3日(日)
会場=山の手事情社アトリエ

詳細は こちら をご覧ください。

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