稽古場日誌

ワークショップ 喜多 京香 2024/02/09

隠岐養護学校アウトリーチ リポート

喜多京香です。
このたび、しまね文化振興財団様よりご依頼いただき、島根県隠岐の島町の隠岐養護学校でアウトリーチを行ないました。
講師は先輩の山本さん、アシスタント講師で同じく先輩の越谷さんと私喜多がつとめ、中学部から6名、高等部から11名の生徒さんが参加されました。

まずは山本さん進行のもと、簡単な身体ほぐしから始まります。身体を思いっきり伸ばしたり、脱力したり。慣れてきたら空間を少し歩きまわってみます。歩いていて、目が合った人とハイタッチ! など、だんだんとワークを大きくしていきます。
最初は少し照れくさそうにしていたり、恐る恐る始めていましたが、素直で可愛らしい生徒さんが多く、こちらからコンタクトをとるとすぐに空間の緊張はほどけます。
何より驚いたのは、先生方がかなりアグレッシブであること。
ウォーミングアップの中でも少し頭を使うようなワークでは、すぐに先生が率先してくださり、慣れるとアレンジも加えたりして生徒さんを笑わせるなど、とにかく信頼関係が厚い学校なのだと感じました。

手の上に、悲しい塊がのっているのを想像する。その塊を自分の胸に押し込んでみようというワークでは、皆さん、やりながら不思議な面持ちをしていました。しかしそれはある種の集中状態に思います。簡単に表面に出さずに、胸に押し込んだその先の中身を探っているようで、しーんとした時間が流れていました。
その後も、楽しい、嬉しい、悔しいなど、ある感情で体育館を走って横切ってみたりと少しずつ発展させていきます。
ちょっと恥ずかしがりながらも、身体を動かし始めると不思議と素直に感情ものっていくもので、すっかり全速力の人もちらほら。

一通りのワークを終えたのち、講師の3人で『白雪姫』を上演しました。
醜い老婆になりすました妃から、白雪姫が毒リンゴを受けとるシーンのみ抜粋した、5分ほどの上演です。
短い5分ですが、皆さんかなりの集中力で観劇してくれました。
「台詞は全部暗記しているんですか?」
「緊張しないんですか?」
「表情とか身体の動きが、すごかった!」
など、終了後にも自ら感想を言いに来てくれる生徒さんもいました。
最後に山本さんからお話がありました。
「みんなが普段授業でやる、国語や数学などの教科に対して”演劇”は、何が違うと思いますか?
……それは、正解がないということです。
なおかつ演劇は、正解を自分でつくっていかなければなりません。」
というのも、みんなの身体でモノや風景を作ってみようという時間がありました。勉強机やギター、レストランなどといったお題を、5〜6名で、一気に作り上げます。
まさに、正解はありません。
難関なのが、数名で一つのモノを作らなければならないこと。どうしても頭で考えながらやってしまったり、話し合いが始まってなかなか進まなかったりします。
とにかく、これが正解であるという強い意思を頼りに、そのモノとして堂々と立つということが大事なのです。
こういった説明をした後の最後のグループは、「動物園」というお題に対し、自分がどのポジションをやりたいのかが瞬時に明確に表れたように思いました。
中でも、地面に棒のように横たわっている男の子がおり、「何を表しているの?」と聞くと、「柵!」と自信たっぷりに答えているのが印象的でした。

これから学校を卒業して社会に出ていく時、同じことが問われるのではないでしょうか。
この日にみんなで「演劇」に触れたことを思い出し、自分の想像力、判断力に自信をもって歩んでいってくださったら、とても嬉しく思います。

喜多京香

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 ※ 文化庁・公益財団法人しまね文化振興財団 主催事業

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