稽古場日誌

夏の夜の夢 松永 明子 2024/06/25

シェイクスピアもわれらも演劇人!

今回の『夏の夜の夢』をお知らせするにあたって、相関図などを載せた鑑賞の手引きを作りました。その中の「シェイクスピアって何がすごい!?」という記事を執筆するにあたり下調べをしました。その際、とても興味深い本に出会ったので紹介します。

『シェイクスピアとグローブ座』(著アリキ・ブランデンバーグ、訳小田島雄志、出版すえもりブックス)
わたしがこの本にいたく感銘を受けたのは演劇人としてのシェイクスピアを生き生きと感じられたからです。どのような時代に、どのような劇場で、どのような観客たちを相手に、どのような仲間と、どのように出世していったのか。楽しい絵と文章で綴られた絵本です。

シェイクスピア達が根城としていた劇場、グローブ座誕生のエピソードもありました。
シェイクスピアはもともと、イングランド最初の公衆劇場シアター座で座付き作家兼俳優として活動していました。ところがある年、土地の契約更新を地主が断ったため、シアター座は存続の危機に陥りました。
「土地は地主に返さねばなるまい、しかし劇場を作っている材木は自分たちのものだ」
そう考えたシアター座の面々はある夜、ひそかにシアター座の劇場を解体し、材木を一本ずつテムズ河に浮かべて運び、その材木で新しい芝居小屋を作ったのでした。それが後のグローブ座ということです。

なんて無茶苦茶なエピソードなんでしょう。この時シェイクスピアは35歳ごろ。今の山の手事情社の若手劇団員たちと同年代でこのような事件をやらかしていたのです。けれど自分たちの活動を続けるため、シアター座の人々がどれだけ必死で切実であったかがうかがえます。

『夏の夜の夢』には演劇に奮闘する職人たちが登場します。

配役を決める際に揉める、いいシーンなのに俳優の台詞が訛っている、稽古場がへんぴな場所、荒唐無稽なシーンをどう表現するのか延々悩む、いろんな人間がいるから兎にも角にもまとまらない!
これらはシェイクスピアが演劇活動をするうえで実際に経験したことなのかもしれません。演劇って……劇団って……大変だよね……と共感を覚えずにはいられません。

シェイクスピアの劇が面白いのはさまざまな登場人物が描かれているからで、それは生活の中でさまざまな人々と出会ってきたからなのかも。そんな演劇人シェイクスピアの生活に想像をめぐらせるのも面白いかもしれません。

ぜひ『夏の夜の夢』のご観劇前に、『シェイクスピアとグローブ座』をお手に取ってご覧になってみてください。きっと作品をよりお楽しみいただけることでしょう。

松永明子

シェイクスピアって何がすごい!

※ 舞台写真:『デカメロン・デッラ・コロナ』(2023年)

**********

若手公演『夏の夜の夢』
日程=2024年7月27日(土)~8月4日(日)
会場=山の手事情社アトリエ

ご予約受付中!
詳細は こちら をご覧ください。

『夏の夜の夢』2024omote 夏夢チラシ 裏【完成A4】追加公演入り

稽古場日誌一覧へ