稽古場日誌

夏の夜の夢 宮﨑 圭祐 2024/06/29

ねたミン

今取り組んでいる作品『夏の夜の夢』では、恋愛絡みの凄まじい妬みが渦巻いている。
そこにちなんで、僕にとって嫉妬とは何かを考えてみた。

僕は色んな事に嫉妬をする。仕事で同僚が人に褒められている、友達の給料が上がった、知り合い同士が付き合った、更には、可愛いワンちゃんが他の人に懐いている、という些細な事にも猛烈に嫉妬してしまう。柴犬がニコニコ笑顔で、近所のおじさんにじゃれている光景を、目を見開いて穴が開く程見つめる事もしばしば。たまにちょっとクゥーンと鳴いてみるが、吠えられるだけでこっちへ来ない。良いなぁおじさんは……こんな具合に、僕は嫉妬の感情を内に秘めつつ、日々を過ごしている。

丁度これを書いている時も嫉妬心を呼び起こす出来事があった。
僕にある映像撮影のオファーがあったのだが、僕は他の仕事が入っており、その撮影に参加出来なかった。後日、僕の代役になった俳優が撮影の様子を話してきた。こういうシーンを撮った、衣装はスーツだなんだと、ご丁寧に撮影したシーンの再現までして事細かに語ってくれた。話し終わって、満足気に去っていく彼の背中を見ながら、彼の撮影の時の様子を思い浮かべてしまった……。
衣装のスーツに身を包み、バッチリポージング。どうだ、キマってるだろう? と言わんばかりの誇らしげで楽しげな表情。僕は歯が砕けそうなくらいに悔しさを噛み締めた表情、羨ましい……。
さぞ自信がお有りなおキメ顔と、それなりにお値段のしたであろう、お綺麗なスーツを、洗濯終わりの服の様にくしゃくしゃにしてやりたい。いっそのこと、強引に仕事を休んでしまえば良かったのか、と自分勝手なことを考えてしまう。だが、ひとしきり悔やんだ後は、人一倍仕事をしよう、またオファーがもらえる様に己と芝居を磨こうという気持ちになった。やる気が満ち、まるで嫉妬心が背中を押すように僕に行動を起こさせる。
嫉妬を拗らせるとマイナスに飲み込まれてしまうが、利用出来れば己のテンションをどこまでもプラスに持っていける。反撃の狼煙の如く心が燃え盛る。
僕にとって嫉妬とは最高の燃料であり、ビタミンなのだ。

『夏の夜の夢』稽古は嫉妬の宝庫。他の誰かが脚光を浴びる、面白い芝居をする、その時僕の嫉妬心が地雷原のように連鎖爆発する。諦めない、まだやれるから今に見てろよ。背後に妬みを燃やしながら、僕はニヤリと笑う。絶対に面白いものを届けてみせる。そんな思いで今日も稽古場のドアを開けている。

宮﨑圭祐 

※ 舞台写真:『デカメロン・デッラ・コロナ』(2023年)

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若手公演『夏の夜の夢』
日程=2024年7月27日(土)~8月4日(日)
会場=山の手事情社アトリエ

ご予約受付中!
詳細は こちら をご覧ください。

『夏の夜の夢』2024omote 夏夢チラシ 裏【完成A4】追加公演入り

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