稽古場日誌
家のエアコンの調子が悪い。外気が35度にもなる暑い季節だが死活問題になるレベルでエアコンの効きが悪く、寝苦しい夜が続いている。
自宅でも死活問題だが、これが稽古場の話になるとさらに重大になる。私が研修生の頃でまだ世田谷区玉堤に稽古場がある時代、しかも大事な大事な《ものまね》発表の日にエアコンが壊れていて、灼熱のような暑さの中で発表をしたことがある。発表の時には騒音防止のため必ず窓を閉め切るようにしており、発表が終わるまで換気ができないため外からの風もなく、さらにその時の私の発表は8分ほどの通常の倍くらいある長尺のものだったため見る方も苦行のような時間だっただろう。演じている私自身も前後不覚の状態で足元がおぼつかないからか、段々と後退していき後ろの壁にぶつかりながら《ものまね》していた。高校の頃の数学の先生の真似をしていたのだが、暑さで朦朧とする中、特徴的なしゃべり方や佇まい、表情に集中して、あとはどうにか段取りとセリフを飛ばさないように意識を繋ぎとめることで精いっぱいだった。
そんな状態で《ものまね》発表をしたのだが意外に反応は良く、当時稽古の担当をしていた川村さんが見て「イメージ変わったね」との言葉をいただき、新鮮さを感じていただいていたように思う。もともと演じることにあまり喜びを感じてはいなかったが、その発表の時はいつになく迷いや余計な思考を捨てることができたからか《ものまね》を楽しんでいた。
『夏の夜の夢』の登場人物は夏の暑さに加え愛の熱に浮かされて逃避行をし、森で彷徨い妖精のいたずらで愛すべき人を見失い前後不覚になる。あの四人の若者たちを中心にした夏を、山の手事情社の若手俳優たちは何度も繰り返し生きている。何度も繰り返しながら、演出のくみこさんの熱い言葉が注がれていく。
……なんだか文章を書いていて、あのチラシのような甘くて冷たいものが食べたくなってきた。
暑くて朦朧とする日々ですが今のアトリエのエアコンは正常に稼働していますので、涼しい環境の中でアツいお芝居をご覧くださいませ。
河合達也
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若手公演『夏の夜の夢』
日程=2024年7月27日(土)~8月4日(日)
会場=山の手事情社アトリエ
詳細は こちら をご覧ください。