稽古場日誌







9月、鳥取は倉吉にてワークショップを開催しました。
会場は倉吉交流プラザ。
奇しくもこの日会場周辺では、焼き鳥フェスティバルが開催されていました。「鳥」取県だけに。
鳥取中の人が集まっているのでは⁉ と思われるほどのにぎわいっぷり。
我々も思わずビール片手に焼き鳥を食べ歩きたい! とよだれがこぼれそうになりながらも、負けじとアツいワークショップを繰り広げるぜ! と奮起してスタートです。
今回は2部構成で行いました。
第1部『エンゲキの入口』では、俳優の日常訓練を楽しく体験&『走れメロス』のミニ公演を上演。
普段、小中学校などで行っているワークショップとほぼ同じメニューですが、今回は参加者のほとんどが演劇経験者かつ老若男女バラエティ豊かな方々ということで、雰囲気はだいぶ違いました。
小学校でやるとたいてい子ども達から感嘆の声が漏れる《スローモーション歩行》は、みなさん押し黙って見つめています……。そして「体験してみたい人!」と呼びかけても、シーーーーーン……。
これはあまり反応が良くない!?
恥ずかしいのか!?
鳥取のエンゲキ人には簡単すぎるのか!?
ちょっとどぎまぎしながら二度三度呼び掛けてみると、やっとみなさん出てきて、結局ほとんどの人が参加。
何だよ! やりたかったんじゃん、とほっと胸をなでおろし、順番に体験してもらいます。
みなさんとても真剣に取り組み、さすが、それなりにサマになる人が多いです。
どうやら多くの参加者が顔見知りのようで、なんとなく牽制し合っていて、失敗する姿を見せたくないとか、いろんな思いが渦巻いてちょっと尻込みしていたんでしょうね。
しかし次の《お題歩行》では、鳥取のエンゲキ人魂を見せつけられることになりました……!
先ほどと同じく、かなり高い参加率。「喜びの歩行」「怒りの歩行」などお題に沿って、身体と声を自由に使って歩くメニューですが、みなさんここで突然はっちゃける!! ゴールまで歩いたら終わりのはずなのに、行きつ戻りつして全然終わりません。いつまでもやり続けたい、叫び続けたい、動き続けたい! 表現欲が大爆発してバラエティ豊かなヘンテコ空間が出来上がっていました。
ここから一気にギアが入り、みなさんノリノリで色んなメニューを楽しみながら体験していきました。
第2部『エンゲキの基礎』では、俳優の演技についてもう少し高度に深く突っ込んで考えながら取り組んでみます。
地味だけどキツいストレッチや筋トレに始まり、第1部でもやった《スローモーション歩行》を今度は曲に合わせてカウントを取りながらやったり、より難しい《シンコペーション歩行》に挑戦したり、感情を込めながら滑舌練習をしたり。
だんだんと、ちょっとやそっとでは太刀打ちできない、「できない」メニューになってきます。
でもそれでいいんです。
自分とは違う何者かを演じる俳優の道は、険しく遠い道のりです。自分の身体を自分が動かしやすいように動かしたり、自分の頭で理解できる範囲で考えたり、そればかりやっていても自分からはみ出すことはできません。
自分の限界に触れ、コントロールしきれない自分を味わうこと。身を委ねて、沸き上がってくる感情や動き出す身体に耳を傾けることが、俳優の第一歩としてとても大事なことだと、みなさんひしひしと肌で感じてくれたようでした。
後半はチームごとにスローモーションでワンシーンを創作し、発表しました。一人ひとり、ワークショップで感じたことや見知ったことをなんとか活かして面白い空間を立ち上げよう、そして自分も楽しんでやろう! という気概が感じられ、エネルギッシュな作品が並びました。
お疲れ様でした!
参加者のみなさんの、有り余るほどの熱意と果敢に挑戦する姿勢に、私たちも大きな刺激を受け、改めてエンゲキのエネルギーを胸いっぱい吸い込みました。
ありがとうございました!
名越未央
