稽古場日誌
馬込文士村演劇祭/馬込文士村 空想演劇祭 安部 みはる 2025/12/09

こんにちは。
俳優部の安部みはるです。
今年も馬込文士村演劇祭の季節が巡ってきました。
馬込文士村演劇祭も今年で5年目に突入です。
今年は浜田廣介さんの3作品です。
お恥ずかしながら、私は今回の作品を読むまで浜田廣介という作家を知りませんでした。
山形出身で、日本のアンデルセンと称えられ親しまれた作家だそうですね。
10月に池上のアトリエを離れてから、大田区各地を自転車で走り回り、稽古に明け暮れています。大田区の地理に強くなってきました。
『りゅうの目のなみだ』の出演者は、山口笑美・松永明子・渡辺可奈子・喜多京香、そして私の女性5人です。
女性5人で「りゅう」という架空の存在をどう演じるのか。
できるだけ大きく、力強く、今までに見たことのない「りゅう」にしたいよね! うんうん。
そして、「りゅう」を恐ろしがる町の人たちと主人公の「こども」の関係をどう見せるか。
初めはお互い近寄りがたく理解し合えない関係だったのが、氷が溶けるように和解したいよね! うんうん。
ならば「りゅう」を探しに行く旅路は険しく困難でやっと辿り着いたようにしたいよね! うんうん。
……で、どうしようか。
声を揃えたり、ゆっくり動いたり、木や風や山や川を表現してみたり、いろんな角度からスクラップアンドビルドを繰り返しています。
突然ですが、将来の夢はなんですか。
こどもの頃は何にでもなれる可能性があったのに、歳を重ねるにつれてひとつずつ手からこぼれ落ちて、自分は今の自分でしかないと思っていませんか。
他人から見えているであろう自分を演じてしまっていませんか。
私は年齢的には十分おとなですが、文学や演劇を通して、木や風や川にもなれているし、他の生き物にもなれています。
こぼれ落ちていったと思った可能性がなんと今、増えていっているのを感じます。
演劇や文学は知らなかった自分を発見するツールなのです。
『りゅうの目のなみだ』の主人公のこどもは、恐れることなくどんどん「りゅう」を探しに行き、偏見のない心で「りゅう」と向き合い相手の心を溶かすのです。
優しさと勇気に満ちたとても素敵な物語です。
ぜひ私たちと、見たことのない「自分」と「りゅう」を探しに行きましょう。
いつの日か壁にぶつかった時、道が途切れた時、このお芝居を思い出して勇気が湧いてくる、そんな作品になるといいなと思っています。
大田文化の森でお待ちしています。
安部みはる
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『りゅうの目のなみだ』
あらすじ:誰もが恐れる龍を、ちっとも怖がらないこどもがいました。こどもは自分の誕生日に招待しようと龍を探しに出かけます。人間から一度も優しい言葉をかけられたことのなかった龍は、こどものやさしい言葉に心を動かされ、ある決意をします。
構成・演出:小笠原くみこ
出演:山口笑美 安部みはる 松永明子 渡辺可奈子 喜多京香

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OTA アート・プロジェクト
馬込文士村演劇祭2025~ものがたりの世界にふれよう~
演劇公演『泣いた赤おに』『りゅうの目のなみだ』『さるかに』
日時=2025年12月20日(土)・21日(日)
会場=大田文化の森 ホール
詳細は こちら をご覧ください。