稽古場日誌
馬込文士村演劇祭/馬込文士村 空想演劇祭 小笠原くみこ 2025/12/16

今年も「馬込文士村演劇祭」がおこなわれます。これまでは、その年ごとに複数名の文士や翻訳者の作品を扱ってきました。今回は、日本のアンデルセンと呼ばれた、浜田廣介[はまだひろすけ]一人の作家にスポットを当てた企画です。
浜田廣介の作品は、どれも物悲しく、寂しさが全体を覆っている中に、炊き立てご飯の湯気のような温かさがあります。私たちの地続きの世界として描かれているように思います。
この「地続き」という感覚は、実は山の手事情社があまり触れてこなかったタイプの作品だなあと、創作しながら思います。
例えば、昨年扱ったグリム童話の『ヘンゼルとグレーテル』は、家族の物語でありながら、ありえないような奇抜で残酷な出来事が起きるので、物語が「地続き」から始まり、どこかこの世界ではないところへ私たちを飛躍させてくれ、結果私たちの中に教訓めいた何かが残るという印象でした。
今回私が演出する『りゅうの目のなみだ』は、龍が登場します。この世に存在しない龍が登場するという仕掛けは、確かに飛躍する要素のように感じます。ですが、龍の姿は、心を開くことができず頑なになった人間の姿と言い換えることができ、「地続き」であることを感じさせます。
今回の創作は、これまでとは違って、「地続き」であることに正面からじっくり取り組もう! と腹を決めるまで、少し時間がかかりました。炊き立てご飯の湯気のような温かさを、お客様にお届けできるよう、もう少しもがきたいと思います。
小笠原くみこ
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『りゅうの目のなみだ』
あらすじ:誰もが恐れる龍を、ちっとも怖がらないこどもがいました。こどもは自分の誕生日に招待しようと龍を探しに出かけます。人間から一度も優しい言葉をかけられたことのなかった龍は、こどものやさしい言葉に心を動かされ、ある決意をします。
構成・演出:小笠原くみこ
出演:山口笑美 安部みはる 松永明子 渡辺可奈子 喜多京香

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OTA アート・プロジェクト
馬込文士村演劇祭2025~ものがたりの世界にふれよう~
演劇公演『泣いた赤おに』『りゅうの目のなみだ』『さるかに』
日時=2025年12月20日(土)・21日(日)
会場=大田文化の森 ホール
詳細は こちら をご覧ください。