稽古場日誌

葵上 川村 岳 2026/02/05

真面目

山の手事情社は「真面目な劇団」だ。

芝居はアバンギャルドに見えて熟慮して取り組んでいるし、アウトローな表現を好んでいるように見えてとにかく基礎を大事にしている。

挨拶は元気よく、稽古の前は稽古場を掃除してから臨み、怪我をしないようにウォーミングアップを念入りにする。

報連相はしっかりする。信頼関係は重要だ。先輩後輩関係なく、意見を交わせるように風通しの良い現場を常に意識する。

観客をかなり意識する。
一期一会の観客にどう芝居を届けて、感じてもらうのか。満足度をどこまで高められるのか。演劇を身近に感じて頂けるようワークショップも度々実施して、演劇の普及にも取り組んでいる。

稽古の鬼である。
本番期間中も当然稽古をする。客入れ前ギリギリまでシーンを微調整し、ヘタすりゃ本番が終わった後でも明日のために稽古をする。少しでも面白い作品にするために。もう稽古ジャンキーだ。

あんまりチャラチャラしていない、というか全然していません。
ただただ「真面目」なのだ。

30年前、初めて稽古に参加した時に感じたのはこの真面目さだった。
文化系の仮面を被った体育会系かと思ったら、ストイックに表現へ取り組む探究者の面もある。

ただ、
とにかく褒められることに慣れていない。
稽古では失敗の連続でダメ出しを受けることが日常茶飯事だ。心が折れそうになることもしばしばある。
「良かったよ」「感動した!」という言葉を素直に受け止めることが出来ない。
「面白い? んな訳あるか……嘘つけありがとう」とこじれたツンデレ状態になってしまう。

ただひとつ。
劇団が創立してから42年間続けてきたという事実は褒められてもいいのかな、と思う。
表現への果てしない探究と実践の繰り返しは気の遠くなる作業だし、正解はない。
きっとやめてしまおうと思ったことだってあるでしょう。
ここまで来られたのは、ただただ演劇をやる楽しさが苦しみを少しだけ上回っていたのでしょう。

3月の『葵上』で山の手事情社は一区切りつきます。観劇の際は心の中で褒めてくれると嬉しいです。

川村 岳

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劇団 山の手事情社 公演『葵上』
日程=2026年3月3日(火)~8日(日)
会場=小劇場B1

詳細は こちら をご覧ください。

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