稽古場日誌


この冬、編みものにハマりました。
きっかけはネットで友人に勧められたこと。池上のお隣、蒲田に手芸専門店ユザワヤがあることもあり、のめり込むのは簡単でした。毎週末ユザワヤに通い、お正月のセールも今年は毛糸を見に行きました。
バレンタインデーが近いせいか、編みものをしていると「誰かのために編んでいるの?」と聞かれることがあります。またある人には、「手編みなんてもらったら重いよ」と言われました。もらったことがあって言っているのか気になるところですが、そんなことは口に出さず、「手編みは毛糸をたくさん使いますものね」と返事をしました。
時間とお金、そして手間をかけて作られる(毛糸は一玉100円のものから数千円するものまであり、手編みをすればお安く済む、とは限らないのです)手編みの贈りものが重いと言われるのは切ないですが、正直なところ、「怨念はこもっているかもね」なんて思います。
わたしの場合は自分が欲しいものを作っているのですが、寝食を忘れて夜通し編み続けてしまう、執念ともいえるその情熱には、「我ながらよくやるなぁ」と感じます。
誰かのために編むとなったらいっそう気を遣うことでしょうし、手を動かしながら相手を想うその時間すらも、愛おしい時間になるのでしょう。その末にできたものを踏みにじられたら……想像するだけで悲しくなってしまいます。
けれどその想いや執念、情熱が詰まっている贈りものを素直に受け取れない、相応の事情が、相手にもきっとあるのでしょう。誰かを想うこと想われること、それ自体は素敵なことなのに、切ない。
そんなことを『葵上』に重ねて考えています。
誰かに贈るための編みもの、もしかしたら痛い目を見るかもしれない。それでもいつか、わたしも誰かのために編んでみたいな。
編み上がったばかりのマフラーを身につけて、今日も稽古に向かいます。
松永明子
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劇団 山の手事情社 公演『葵上』
日程=2026年3月3日(火)~8日(日)
会場=小劇場B1
詳細は こちら をご覧ください。