稽古場日誌

うプ! 山口 笑美 2026/04/01

真剣なおふざけ

30年ほど前、研修生(ニュージェネレーションのかつての呼称)になりたてのある日のことです。私たちは大きな公園の入り口に集められました。ツアーコンダクター役の劇団員に導かれ、たどり着いた先々で目にしたのは、異様な光景の数々でした。

ゴミ箱の中から道行く人に怒鳴り散らす女。
小川から這い出てくる女に、水辺で舌をペロペロと出す男。
股に葡萄の葉を貼り付け「我はディオニュソスなり〜!」と丘を駆け回る男。
遊んでいる子供たちに混じり、全身落ち葉まみれで暴れ回る男。
クラシックが流れる中、詩を詠む男の遥か遠方で、階段を延々と転がり続ける女……。

公園のいたる場所で、劇団員による「発表」が繰り広げられていたのです。
今思えば「捨てネタ」のオンパレードだった気もしますが、ネタの良し悪し以上に、真剣にふざける大人たちの凄まじいエネルギーに圧倒され、ただただワクワクしたのを覚えています。

あれから随分と時が経ち、作風もメンバーも変わりました。
けれど、「演劇と真剣に遊ぶ、真剣にふざける」という姿勢だけは、山の手事情社がずっと大切にしてきた、変わらぬ芯の部分です。
私たちが長年模索し続けてきた《四畳半》の様式も、実は最初は笑いながらルールを作っていました。「なんでそんなに体が歪むんだよ……」と心の中で突っ込みを入れながら。
傍目には堅苦しく見える《四畳半》も、その根底にあるのは、あの日の公園と同じ「壮大な、真剣なおふざけ」だったのだと思います。
山の手事情社の歴史は、「真剣な遊び」の積み重ねだと思います。

さて、いよいよニュージェネレーションの公演です。
『うプ!』という遊び場で、彼らがどんなふざけっぷりを見せてくれるのか、楽しみでなりません。
思いきり暴れ回って、盛大な花火を打ち上げてほしいです。

劇団 山の手事情社は休止となりますが、それぞれの体に染み付いた《山の手メソッド》を使い、これからの人生という「遊び」も、真剣にふざけ続けていきたいですね。

山口笑美

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劇団 山の手事情社 ニュージェネレーション公演『うプ!』
日程=2026年4月8日(水)~12日(日)
会場=大森山王FOREST

詳細は こちら をご覧ください。

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