稽古場日誌

ダイバー 斉木 和洋 2015/02/13

『ダイバー』に思う。

今年の研修生修了公演は『ダイバー』である。

明確なストーリーはない。
たぶん
心躍らせる波乱万丈なドラマもない。
おそらく
謎めいた仕掛けが巧妙に張り巡らされ、ラストには思ってもいないどんでん返し。
そんなこじゃれたものはきっとない。
(もしあったらごめんなさい。あっても悪いものじゃないのであってもいいと思います。)

そこにあるとはっきり言えるのは
見えない理想に向かってやっきになっている連中が
そもそも求めている理想がさっぱりわからないままに思い切り道を踏みはずす。
右手に握ったアクセルは全開で
左手は全力でブレーキを握り締める。
どこかに向かって突き抜けていきたいのにどこに進めばいいいのかまったくわからずに白煙をあげながらその場できりもみをし続けるおたんちんたちの姿である。

わざわざ劇場に足を運んで何を観ているのか?
人間でしょ。人間。生身の人間。
ロミオだって、ハムレットだって、マクベスだってみんな自分勝手なおたんちんなんです。
戯曲に描かれ歴史に名を残したおたんちんたちを演じようと思ったらまずは自分がおたんちんにならないと。
実生活でおたんちんぶりを発揮したらお縄にかかってしまうこともあるけれど
舞台の上ではそれでいいんです。
見せたまえどうにもならないおたんちんぶりを。
当たり前だけど大切なことを毎年考えさせられるいい舞台です。

現時点では何も見ていなくて具体的にはさっぱりなのですが。
そこは先輩!!
美智子さん楽しみにしています。

斉木和洋

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