稽古場日誌

ダイバー研修生 研修生 2015/02/20

ゆかいな仲間たち/鹿沼玲奈

今回の修了公演では、『ヴォイツェク』というゲオルグ・ビューヒナーが書いた未完の戯曲を使用しております。

主要な登場人物は以下5人
○主人公、フランツ・ヴォイツェク
○フランツの内縁の妻、マリー
○マリーの浮気相手、鼓手長
○フランツの上司、大尉
○医者

この5人、超絶! 個性的! でございまして。
台本を渡されじわじわと稽古が始まった最近ですが、ふと気がつくと、彼ら5人は「会話」と呼べるものをおよそしてはおりません。
個人個人が勝手な主張を口に出しているだけで、話が噛み合っていないのです。
話しかけている相手の目をみたり顔色をみたりすることはないのです。ただ、自分の状況や気分を滔々と語り、満足している。

そしてその世界観がとにかくビビットで、収まりが効かなく、マシンガンのように相手を攻撃してゆくのです。
不気味な空気感がそこには生まれ、なんともいえない「歪み」が観ているこちらを不安にさせます。
おいおい、こいつら、やべえぞ、と。
ビューヒナー、狂った戯曲書きやがるぜチクショー、と。

しかしなぜ今期研修生がヴォイツェクを演じるのでしょう?
演出の美智子女史に「ヴォイツェクやるよん♪」と知らされたとき、まず「なぜ? いま? このメンバーで?」と首を傾げたわたくし。
ずいぶん最近まで、わたくしは渡された台本を不思議な目で見ていました。まだ台本とお友達にはなれないかんじ。
どちらかというとそれは、不穏な空気を発している部屋の隅に放置された ゴミ袋のようでありました。

ですが、ある時ふと稽古の休憩中に周りのおしゃべりする様子をみていると・・・ 気づいてしまったのです。
今期研修生と、登場人物たちとの共通項は、まさにこの「噛み合っていない状態」だ! と!

あわあわ。なんということだ!
こいつらやべえぞ、とか思っている場合じゃねぇ! うちらがやべえぞ!!! ほとんどの会話、ヴォイツェク並だぜ?!!

いやはや、美智子さんはすごい方だ・・・(遠い目)

今すぐにでも部屋の隅のゴミ袋の中身を引っ掻き回し、一体全体何が入っているのか調べたくなりました。
そしてそこはあくまでポジティヴバカなわたくし、「だったらこの気持ち悪さ、極めようぜ!」と、また人としてあらぬ方向に突っ走ってゆくのでありました・・・。

鹿沼玲奈

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