稽古場日誌

ダイバー研修生 安田 雅弘 2015/02/25

ダメ出しって

先日、通し稽古を見た。
初めての通し稽古、とのこと。
終了後、演出担当の大久保美智子と小笠原くみこの2人と話をする。
激論というわけでもなく、かと言って懇談というのでもない。

どんな芝居でも、初めての通し稽古が面白いなんてことはない。
この芝居をどのようにまとめたいのか、それを演出担当に問いただし、
必要ならばそれに助言をしていくのが「監修」の私の立場だ。

一部使われている「ヴォイツェク」は
ただでさえ扱いにくいテキストだが、
台本に初めて取り組む研修生にはなおさらだろう。
演出陣がちゃんと読みこんでいないと何が何だかわからなくなる。
そもそも大久保がなぜこの戯曲にたどりついたのか、
それをはっきりさせたい。
「ほかのものではなく、これがやりたい」という祈りの強度が、
結局、観客に届く熱量になるのだ、とボクは思う。

研修生たちには直接の「ダメ出し」はしない。
あくまでも演出担当にダメ出しをする。
しかしそれにしても、「元気がないね」と、
演出担当の2人に伝えた。
がんばっている、一生懸命である。
そのことに異論はない。
「元気」ってのはそういうことじゃないんだな。
「結果のイメージ」があるかどうか。
「結果」ってのは演劇の場合「本番」だ。
それがあれば、たとえ過程はまちがっていても、
つまり現段階でやっていることがトンチンカンでも、
俳優は「元気」なはず。
演出に必要なのはこまごましたダメ出しではなく、
「ゴールのイメージ」をいかに俳優スタッフに伝えられるか。
それが不足しているのではないか、と2人に伝えた。

あれは違う、これも間違い、そこも何とかせい!
というのがダメ出しだと、何となく思われているかもしれないが、
全然違う。
本番に向けて、ゴールを目指し、
結果を出すために行なう調整作業なのだ。
もちろんダメ出しは最終的にはとても細かくなる。
なぜか。
神は細部に宿るからだ。
ただ、そこまで行けば、ゴールはもうかなり近い。

安田雅弘

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