稽古場日誌

ワークショップ 中川 佐織 2015/09/27

夏休み小学生「エンゲキ教室」

大田区の各小学校では、夏休み期間中、教室を貸し出し、様々な講座を開設する企画があります。
そこに通う子供たちを対象に(一部親子で参加可能な)、授業では体験できない様々な講座が開設され、講師は、地域の方、保護者、先生方がつとめ、講座数が多い学校では100以上もあり、とても力を入れている企画です。

私たち山の手事情社も、昨年からいくつかの学校にお邪魔し、低学年と高学年に分けて、ワークショップをおこなっています。
近年では、学芸会が2年に1回しかないそうで、エンゲキ体験がない子供たちがほとんどです。
ですが、たった2時間で創作し発表する、という体験をしてもらいました。

メインのプログラムは、学年や学校によって少しずつ変えています。
日常的な動きをもとに作り出す創作的ダンス《ルパム》、
日常の出来事を寸劇にする《ショート・ストーリーズ》、
絵本を題材にした紙芝居演劇のいずれかをおこないました。
どのプログラムも、少人数のグループに分かれて、自分の感じたことを動きや言葉で表したり、体験やアイデ ィアを話し合ってシーンを作っていきます。

紙芝居演劇では、チームごとに絵本を1冊渡し、描かれてある絵をストップモーションで再現、自分の役のセリフを自分で考えて一言言います。
このプログラムは、メインの役だけではなく、絵の中に描かれているものならなんでもよい、というのが面白いところです。
例えば、桃太郎チームは、桃、川、包丁、などを演じる子供たちがあらわれました。
中でも、一番面白かったのは、浦島太郎チームのラストシーン。
浦島太郎が思わず開けてしまった玉手箱役を演じる女の子が言ったセリフは、
「だから言ったのに・・・」。
想像もしていなかった、主人公・浦島太郎の行為を咎めるセリフに、観ていた私たちや子供たちは大笑いです。

《ショート・ストーリーズ》では、テーマをもとに、子供たちだけが過ごしている時間の中にある出来事を寸劇にしてもらうのですが、ある学校では、大人もいる時間帯の出来事を《ショート・ストーリーズ》にしてもらいました。
テーマは「大人に言われてショックだった出来事」。
子供たちから見える、大人の理不尽さに、見学にいらした先生方は「ドキっとした」「ヒヤリとさせられた」という感想が。
大人の願うルールと実際は違い、言葉では説明出来ない気持ちがあることを、改めて感じた時間でした。

演劇は、自分や他者の気持ちを想像し、世界や社会と繋がっていく手立てになるのではと、思います。
参加した子供達のほとんどが、「エンゲキ楽しい !!」と言ってくれ、素直にうれしく感じました。
豊かな時間を共有出来た夏休みでした。みんなありがとう。

中川佐織

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