稽古場日誌

研修生 研修生 2015/10/04

井の中の蛙、大海の端で足先を突っ込む

はじめまして。今年度研修生の菅原有紗と申します。
お見知りおき願います。

秋田に生まれ、神奈川で育ち、今年5月からここ、東京都大田区にて一人暮らしを始めました。
大学を卒業して、全てが“はじめまして”な環境にビクビクしながら過ごした4ヶ月。
五里霧中な中で、ただひたすら目の前の大きな壁に頭をぶつけていました。

週3回ある稽古で貰ったダメが、
家で皿を洗っていても、
バイト中にバイクを飛ばしていても、
いつでもどこでも頭の片隅からチラチラと私を見つめてきます。

「視点が幼い」
「自分の身体・声がわかっていない」
「表面的でやってるフリにしかなっていない」
「菅原有紗の好きなもの・嫌いなものが見えてこない」

そして毎度安田さんの声で鮮明に脳内再生される一言。

「そんなの演劇じゃねーぞ。」

ぬぁあぁああああぁあああああ!!!!!

わかってます。
頭の中じゃわかっているのに体現できない。
もどかしい。
いや、結局頭でもわかっている“フリ”にしかなっていないのだろう自分に腹が立つ。

今までできている気になっていたところから、
昨年の夏に「何かが足りない」と思い、こうして山の手事情社に飛び込みました。
その「何か」の正体がやっと、ボンヤリとですが見えてきた気がします。
井の中の蛙でした。
大海を泳いで泳いで、探し回らなければ。

自分を知ろう。まずはそこからだ。
洗いざらいさらけだせない、客観的になれないのは、自分と向き合ってこなかったから。
対人関係にしてもそうだ。
母親以外にしっかり向き合った人がいただろうか…。
自分が関わってしまうことで相手に迷惑をかけたり、傷つけてしまうことが怖くて、いつも壁を作っていました。
それじゃいけないと思って、この夏、少しずつ壁を壊しにかかってみました。

彼氏に本音を隠さないようにしたり、
8月の終戦記念日、祖父母のいる秋田へ7~8年ぶりに行って話をしたり、
仕事場で知り合った、亡き父とどこか似ている人に罪滅ぼしの父親孝行をしてみたり…。
他人と向き合おうとした時、嫌が応にも自分の汚い部分に直面し、何度も心が抉られました。
弱くて、浅はかで、怠惰で、欲深くて、求めてばっかりで、辛くなった。
でもこれが人間なのかもしれないなあ、なんて。
萎縮してビクビク人と付き合ったり、
弱さを見せたくなくて虚勢を張ってみたり、
表に出てくる形は人それぞれでも、根っこの汚さは誰しも似たようなものかもしれない。

まだまだ向き合いきれていない。
でも、今“はじめまして”をした自分の欲求は、
「多くの人に芝居を観て欲しい。」
ということ。
今までは大義名分的に頭で思っていたことだけれど、
今の思いは頭ではないところで感じている。
そのためには面白い芝居をつくらなくてはっ!
もがきながら、大海を泳ぎ続けます。
よろしくお見守りください。

菅原有紗

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