稽古場日誌

研修生 研修生 2015/10/12

本質を問え

研修生2年目になりました、松永明子です。
今年度もよろしくおねがいいたします。

昨年の研修プログラムは大久保美智子さんが1年を通して、ほぼ1人で研修生を見ていましたが、今年は斉木和洋さんをメインに川村岳さん、浦弘毅さん3名の先輩方にご指導いただいています。川村さん、浦さんはゲストエチューダーとして前年度もお世話になったのですが、斉木さんは昨年あまり深くお付き合いすることがなかったので、「この人は一体どんな人なのか??」というところから始まった研修プログラムでした。

まずはじめに驚いたのは、前年度と同じメニューなのに人が違うとこうも言っていることが違うのか、ということ。美智子さんと斉木さんで、あるいは斉木さん・ 川村さん・浦さんで三者三様、いや、四者四様!? 先輩たちのアドバイスはそれぞれ、てんでばらばらに聞こえました。もちろん4名の先輩たちは同じ劇団に所属されているので良いとしている美意識は共通して持っておられますが、しかしその美意識はばらばらの価値観によって支えられている…らしい!?

もちろん先輩たちの言っていることは間違っているわけではありません。皆さんそれぞれ、わたし達に足りないことを気づかせるために助言してくださっているのです。…そんなこと分かってるけど、こんなにばらばらなこといっぺんに言われてもぜんぶできないよ〜〜〜〜!!! でもぜんぶやるんだよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!

しかし落ち着いてみると、面白いことに気づきました。

ハテ。もしかして稽古中のダメ出し(アドバイス)って、わたし達に足りないものであると同時に、先輩達が俳優として大切にしていることやコンプレックスなんじゃないの? 人によって俳優としての悩みや信念が違うように、わたし達に伝える言葉も違うのかも…

同じ稽古のメニューでも俳優によって、その稽古の本質の捉え方が違う。そのことに気づくと、先輩達の俳優としての性格がなんとなくわかるような気になってきました。ちょっと面白くないですか? ダメ出しの言葉を聞くと、「ああ、この人はかつてこういうことで悩んできたのかもしれない。」「この人は普段こういうことを考えて演劇に向き合っているのだな。」と感じるのです。

前年度は自分のことにいっぱいいっぱいで、そんなこと考える余裕もありませんでしたが、今年は周りにいる人が何を考えているのか、発言からその人が見つめているもの、抱えているものを見つめることに興味が湧いてきました。これって本質っていうんでしょうか? 昨年、大久保美智子さんはよく本質という言葉を口にしていたのですが、ごめんなさい、正直昨年度は本質という言葉の意味、それこそ本質という言葉の本質が分かっていませんでした。でももし分かってきたなら、すこしは成長したってことかしら。

しかしそれにしてもひょっとして? 俳優という仕事は常に本質のことばかり考える仕事なんじゃないか? この物語の本質は? この役の本質は? この上演の本質は? 自分とこの役の本質で重なるところはあるのか? ワーオ、目眩がしますね! けどなんだか面白そうだ。そしてきっと俳優というのは自分自身の本質をも常に問い続け、そして貫かんとする生き物なのかもしれない。わたしはどれだけ問えるのか。わたしがわたしであるという本質、わたしが演劇でやりたいことの本質。どんな風に目の前に広がる事象と向き合えるかな。怖くて、ちょっと楽しみだ。

松永明子

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