稽古場日誌

ワークショップ外部活動 越谷 真美 2015/11/01

シニアのための俳優講座 リポート

倉品淳子が講師を務める60歳以上の女性限定の人気講座も3年目に入りました。
今回は9月から来年3月までの長丁場。
ギリシャ悲劇の傑作「オイディプス」に取り組みます。
といってもテキストをそのまま上演するわけではなく、今回も参加者のみなさんが作ったシーンをもとに構成していきます。
参加メンバーのうち4分の3はこの講座の経験者の方々なこともあり、この9月から10月にかけての前半戦からネタ出しを積極的に進めてまいりました。
もう何度もやっている《ショート・ストーリーズ》、《ルパム》、《漫才》といった《山の手メソッド》の定番メニューでは今までとは違うことをやろうと挑戦する姿が見られました。
自分の引き出しに飽きて、新しい何かを求め始めて試行錯誤することこそ俳優の仕事。
この講座もいよいよ本格的になってきているのを感じます。

とはいえ、今回の「オイディプス」。
遠いテバイの国の王様の話。長々とした台詞。登場人物はカタカナばかり…。
はじめは皆さんとっつきにくそうでした。
講師の倉品もどうしたら「オイディプス」と皆さんとの接点が広がっていくのか迷いながら様々な課題やテーマを模索しています。

しかし思いもよらないきっかけでシーンやコンセプトがひろがることがあります。
そういう瞬間がとてもおもしろい。
だからこれをやったら「ダメ」ということはありません。
間違えても、勘違いしていても、自信がなくても、それでもいいからやるときはやる。その場に集中すること。
集中力が落ちると倉品からゲキが飛び、長時間の講座で心身ともに結構ハードですが、参加者のみなさんのモチベーションはとても高いです。

日常生活のなかで演劇的な時間を持つこと、例えば、自分自身と向き合ったり、感情をおもいきり出したり、他者と真剣に向き合ったりというのは実は難しいことだと思います。
これまでの時間を家族や仕事のために割いてきたので、初めて自分のために時間を使いたいとおっしゃって参加されている方も多い。
《ショート・ストーリーズ》と呼んでいる寸劇をやると、皆さんが日常でいかに人間関係のしがらみのなかで暮らしているのかが垣間見られ、そのバラエティの豊かさとリアリティの濃さに毎回はっとさせられるのですが、演劇に触れる時間というのは日常から自分自身を解放させる、実はとても贅沢な時間なのではないかとも気づかされます。

そんな時間を共有しながら私にできることは何なのか考えつつ、皆さんがより自由に、大胆に取り組んでいけるよう後半戦もサポートしていきたいと思います。

3月、シニア女優たちによる「オイディプス」をどうぞお楽しみに!

越谷真美

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シニアのための俳優講座 構成劇「オイディプス」
主催:相模原市民文化財団

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