稽古場日誌

その他 越谷 真美 2020/11/28

フロンティア精神で

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新型コロナウイルスの出現によって、世の中から演劇をやる意義が問われております。
そんな中、今年も研修生が集まってくれました。その中には、それぞれに様々な理由や決断があったことでしょう。
そこで、今回の劇団員による稽古場日誌は「何故ワタシは演劇をやるのか」をテーマとして、今年度の研修生を応援していきます。
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山の手事情社は劇団であり、アーティスト集団でもある。
私は山の手事情社のそんなところが好きで活動を続けています。

劇団員のほとんどが研修プログラムを経て入団します。
それまでのキャリアはあまり関係ありませんし、もともと演劇畑じゃないところからやってきたひとも結構います。
研修プログラムで基本的に戯曲を使わないのは、俳優が特定の劇作家や演出家の世界観を表現するためのコマとしてではなく、まずはひとりの魅力的な俳優として、どこにいっても活躍できるような、自立した俳優になるためのトレーニングをするためです。
劇団員になれば、俳優としてはもちろん、俳優じゃないこと、例えばワークショップだったり演出だったり、自分で企画することだったり、スタッフワークでもなんでも、自分がやりたいことをカタチにできる、挑戦できる環境です。

20代のときシビウ国際演劇祭に参加して、世界にはものすごい俳優がいること、俳優という仕事がいかに高度な専門職かを目の当たりにしました。

俳優ってすごい!
演劇ってかっこいい!

山の手事情社に入り、海外の演劇に触れて、いまも原点となる原動力はいたってシンプルです。
しかし日本には残念ながら、そのような感動を共有する土壌がほとんどありません。
これからも演劇に感動するために、続けていくために、自分にできることは何なんだろう? それを自問自答することが、自分にとっての演劇活動かといまは考えています。

昨年から「演劇ジム」というワークショップをはじめました。
俳優だけでなく、普段演劇をやらない方にも発声練習や滑舌、身体訓練をやっていただき、それぞれの活躍の場で活かしていただくためのワークショップです。
運動不足解消やリフレッシュのためにいらっしゃる方もいれば、演劇活動をお休みしている間のメンテナンスとして、オンラインでお仕事の際に滑舌を改善したい、大勢の前で進行するコツをつかみたい、カラオケで気持ちよく歌えるようになりたいなど多種多様な目的で利用していただいています。
まだまだ小さな規模ですが、ワークショップを通して俳優の仕事について少しずつ関心を持っていただけたらと思っています。

さて、今年度も大変な状況のなか、5人の研修生が集まりました。
彼女たちはこれから演劇を通してどんなアーティストに育っていくのでしょうか。ひとりひとり同じ道はきっとひとつもないはず。
フロンティア精神が大事です、きっと。
みんな頑張れ。わたしも頑張ります。

越谷真美

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