稽古場日誌

傾城反魂香 高島 領也 2017/09/29

大田区へ唸りに行こう

自分は今回の『傾城反魂香』に出演しないが、日々の稽古を見学している。シーンごとに稽古が進められ、毎日の変化を見て俳優達の創意工夫を感じる。そんな中、稽古で登場人物の人間性が垣間見えるようなシーンを見ると興奮する。
それがまさにこの間あった。

吃りの絵師又平(またへい)が師匠に認めてもらうために師匠とその奥方に直談判をするというシーンがある。
師匠の土佐将監(とさのしょうげん)は名家の絵師ではあるが、訳あって娘を遊女にしなくてはならない程の貧乏暮らしをしている。手柄を立てない又平を頑なに認めない師匠の土佐将監。そこで又平は敵を倒し手柄を立てるから、認めてくれと将監に言い出す。当然将監はそれを断るが、又平はそれなら死ぬと暴れ出す。そこで将監の奥方が又平に一言いう。
という流れなのだが、そのシーンが魅力的だった。

将監の奥方を演じるのは安部みはるさんなのだが、奥方が泣きながらに又平に訴えるその姿は、奥方の遊女に出した娘への思いや、息子の様に可愛がってきたであろう又平への思い、絵師の妻として将監を支える苦労、それらが一度に見えた様で思わず「おぉっ」と唸った。
台本を読んだだけでは印象の薄い奥方であったが、印象がガラッと変わり厚みのある人間性に魅力を感じた。

最終的にどんな形になるかはわからないけれども、これからの進化が楽しみなシーンのひとつだ。そんな魅力的な唸るシーンが日に日に増えている。
是非皆さんも、山の手事情社『傾城反魂香』を観に大田区へ来て唸ってください。

高島 領也

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『傾城反魂香』
2017年10月13日(金)~15日(日)
大田区民プラザ 大ホール
公演情報はこちらをご覧ください。
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