稽古場日誌

うリアしまたろ王 安田 雅弘 2018/10/18

千荊万棘[せんけいばんきょく]の日々

戦中を描いたドラマや映画などで、
最前線で飢餓状態にある兵士たちが
食べ物のことしか頭に浮かばないという場面がある。
比較するのは失礼かもしれないが、いや明らかに失礼だが、
一日中、文字通り朝から晩まで稽古場に閉じこもっていると、
家と稽古場以外のどこかに身を置けるだけで、
ぜいたくでありがたいことのように思えて来る。
海や山に行きたい、多摩川の花火に、お会式に行きたい、
蒲田あたりのゴチャゴチャした居酒屋で呑みたい、
せめてラーメンを食いたい……。

ラーメンくらい食べればいいじゃないか、
と私も思う。
しかし芝居の姿が見えてこないと、
不思議とそういう気持ちにならないのである。
そして新作は例外なく完成イメージが
ほとほと見えてきにくいものなのだ。

産みの苦しみとか、試行錯誤とか言えばカッコいいが
実態は己の能力の無さを天に呪いながら、
千荊万棘[せんけいばんきょく]の中、
止まらぬ冷や汗や脂汗にまみれる日々なのである。

安田雅弘

劇団山の手事情社公演『うリアしまたろ王』

日程=2018年10月18日(木)~21日(日)
会場=東京芸術劇場 シアターウエスト
詳細は こちら をご覧ください。

うリアしまたろ王

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