稽古場日誌

あたしのおうち 研修生 2019/02/01

貝みたいな

自分が芝居をやっているルーツについて書いてください、という事で考えてみる。
そして、書いたものを劇団員の方にチェックしてもらう。差し戻されてしまった。
「具体的な事、高見個人の考えや視点に欠けている」と言われた。そうなのだ、私は自分の考えや思いを伝えるのが正直言ってとてつもなく苦手なのだ。思い返してみれば稽古中、もしかしたら日常生活でも、これでもかというほどそれは発揮されているに違いない。

ある時、研修生の1人が体調不良によりしばしば稽古を欠席することがあり、たった3人で稽古をせざるを得なかった。この劇団に限った事では無いと思うが、稽古を休むというのは余程の事がない限り、ましてやしばしば行われて良い事では無い。本来であればそのような事でエチューダー(研修生担当)の手を煩わせるべきではないと思うのだが、この惨状を見かねて稽古は中止となり、一度研修生同士で話し合って今後の方針を決める事になった。
話し合いは私を除いた2人から意見が主に出ており、互いの意見の違いから双方ぶつかっていた。私はその時、思っていた。「なんで! 稽古に来ていない人の事で、ましてやその当事者の居ないこの状況で稽古の時間を割いて考えなければならないのか!」と、悶々としながら、自分の本当に思っていた事は言わないまま、2人の意見のぶつかり合いの仲裁をしていた。

私は自分の意見を述べる事に対して、臆病なのだ。そうしてがんじがらめになり、貝のように押し黙ってしまう。稽古では、そんな自分を塩水に漬けようとするが開かない。一瞬開いたかと思っても直ぐに閉じてしまう。時折、死んでしまっているのではないかと思う。そんな悶々としたものを吐き出す場所として芝居を始めた、それがルーツだったのだ。

高見駿

**********

あたしのおうち

2018年度研修プログラム修了公演『あたしのおうち』
日程:2019年3月6日(水)~10日(日)
会場:大森山王FOREST
詳細はこちら

2019年度研修プログラム「俳優になるための年間ワークショップ」
オーディション開催中
詳細はこちら
年間ワークショップ参加者体験談
年間ワークショップカリキュラム

稽古場日誌一覧へ