稽古場日誌

あたしのおうち 中川 佐織 2019/02/06

将来の夢

中学生の頃、自分の将来は作曲家だと思っていた。でも、今、演劇をしている。実際は全く違っている。幼少から音楽をやっていても、大学を出ても、夢というのは叶わない時がある。
24歳の時、一生をかけてやるんだ! と思っていた夢を諦めてしまった。昼の日差しが入る、暖かな家のリビングで、突然、気が抜ける様に……。
夢が冷めてしまった時の虚無感は、とても辛い。残りの人生の長さにびっくりして心拍数があがる。
今までの自分てなんだったの?
大事にしてきた時間が壊れ、見たことも無い寿命の塊が現れて、立ち向かう術が分からず怖くて進めなくなってしまった。泣いた様な気がする。
どうやって歳月を過ごせばいいのか、誰にも聞けなかった。
まだ夢をみていた時、6つ上の兄に「なんで夢を持たないの?」と聞いたことがある。自分より頭も良く運動もでき、友人の多い兄は「自分にそんな期待していないから」と言った。
その言葉が頭をめぐり、期待をしていた自分が情けなくて「大丈夫、大丈夫、大丈夫」とつぶやく。
そんな日々に、演劇が目の端に入ってきた。
藁にもすがる思いだったと思う。
劇団山の手事情社の研修生になったのもその頃だ。よく入れてくれたなぁ~と今でも思う。
そして、演劇をすることは自分の残りの命に立ち向かうことにもなった。
わたしが他者にみせているのは、命に立ち向かうことを魅せていると思う。
命に立ち向かうことは、死へ向かうことをも観せているのだと思う。
そういうわけで、やっている。

研修生たちも、それぞれのルーツを掘り起こし、人生の一瞬を観せようと躍起に稽古をしている。
きっと、心が慄える作品ができるのだろうと、そんな期待を込め、頑張って欲しいと思う。
ぜひ、劇場にお越しいただければ幸いです。

中川佐織

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あたしのおうち

2018年度研修プログラム修了公演『あたしのおうち』
日程:2019年3月6日(水)~10日(日)
会場:大森山王FOREST
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2019年度研修プログラム「俳優になるための年間ワークショップ」
オーディション開催中
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