稽古場日誌

あたしのおうち 佐々木 啓 2019/02/10

根拠のない予感

妄想ばかりしていた少年時代だった。
妄想する力が強すぎたのか、時々現実が侵食されたこともあった。
幼稚園から小学校に進学したばかりの頃、僕はウルトラマンにハマっていた。のめり込み過ぎていつか怪獣が本当に現れて街を破壊するのではないかという恐怖に襲われたことがあった。自分が学校にいる間に家が怪獣に襲われたら両親と二度と会えないかも知れない、そう思い込んでしまい学校に通えなくなった時期もあった。

中学校に進学すると今度は、自分の頭の中が周囲に筒抜けなのではないかという妄想に取りつかれた。「○○さん、気に食わないな」と思ったら、僕が○○さんのことが嫌いだとばれる、と思っていた。勿論そんなのは僕の勝手な妄想だ。自分でも分かっているのに抜け出せなかった。妄想はエスカレートしていき日常生活にも支障をきたした。ふつうに行動したり喋ったり出来なくなっていった。「お腹空いたな、今日のご飯はカレーかな」こんな頭の中で何気なく喋っている言葉さえも筒抜けなのではないかと思ってしまい、頭が痛くなった。この妄想には中学、高校時代の約六年間苦しめられた。ストレスで白髪だらけになった。
楽しいことを妄想する分には良いけれど、方向を間違うと自分自身を縛りつけて苦しめる、妄想は諸刃の剣なんだと身に沁みました。

演劇は妄想から生まれるものです。演劇を続けていれば、いつか妄想をコントロールできるようになるのではないかと、根拠のない予感が何故かするのです。その根拠のない予感のためだけに演劇を続けているのかも知れません。

佐々木 啓

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あたしのおうち

2018年度研修プログラム修了公演『あたしのおうち』
日程:2019年3月6日(水)~10日(日)
会場:大森山王FOREST
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2019年度研修プログラム「俳優になるための年間ワークショップ」
オーディション開催中
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