稽古場日誌

あたしのおうち 河合 達也 2019/02/19

はじめてのおしばい

保育園の年少の頃、発表会で『ピーターパン』をやりました。その頃から性格がひねていたため、周りの皆が主役のピーターパンをやりたがる中、僕だけがフック船長をやりたいと心の中で思っていました。でも引っ込み思案な性格だったため口には出さずにあまり乗り気じゃない風を装っていたので、回ってきた配役はフック船長の手下の海賊でした。

やることは単純で、フック船長の登場についていってワラワラとしているだけの役でしたが、唯一の見せ場がありました。それはピーターパンとの戦いのシーンで、ピーターパンにやられて海に落とされるシーンです。

そのとき保育士さんからついた演出は「戦いのシーンだから舞台上を動き回ってそのうちピーターパンにやられて舞台袖に飛び降りて下さい」というものでしたが、当時の僕はあまり理解できておらず「動き回って飛び降りる」だけを必死でやっていました。保育士さんもあまり気にする事も無く温かく見守っていたので、僕もこれでいいんだと安心してやっていました。

何回かリハーサルを重ねて行くうちに段々と楽しくなってきて、周りの友達はピーターパンにやられて「ぎゃー」とか「うわー」とか言いながら舞台から飛び降りていくのに僕だけ喜び勇んで飛び降りていく形になりました。そのおかしさで皆から笑われて、僕も笑いが取れるから舞い上がってもっと興奮して喜びながら飛び降りていました。

本番では親や兄弟も含めて色々な人が観に来ていたので僕のテンションは最高潮に達し、いつも以上に舞台上を動き回り、舞台から飛び降りるときは空を飛ぶ気持ちで飛んでいました。軽く浮遊していたように思います。ただその後のピーターパンとフック船長の決闘のシーンが始まってから飛んだので、緊張感のある格好いいシーンが大笑いのシーンに変わってしまいました。後から親や兄弟にも「あんたなんであんなに楽しそうに飛び降りたの!」と突っ込まれましたが、横で聞いていた保育士さんが「あれでいいんですよ」とにこやかに応えてくれて、僕もよくわからないまま大満足でいました。

その頃から恐らく今でも変わらず、ずれていてどこかおかしいけれど誰よりも芝居を楽しむことを大事にする、そんな人間に至っているように思います。

河合達也

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あたしのおうち

2018年度研修プログラム修了公演『あたしのおうち』
日程:2019年3月6日(水)~10日(日)
会場:大森山王FOREST
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2019年度研修プログラム「俳優になるための年間ワークショップ」
オーディション開催中
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