稽古場日誌

あたしのおうち 松永 明子 2019/02/20

エッチで贅沢

子どもの頃、短い時間をロンドンで過ごした。当時わたし達家族が住んでいた同じ敷地内に、もうひとつ別の日本人の家族が住んでいた。その家族にも同じ年頃の女の子がいて、彼女とよくリカちゃん人形で遊んだ。

親同士も交流があり、日本から送られてくる映画やテレビ番組を録画したビデオの貸し借りがあった。そのうちの一つに、恐らく伊丹十三監督の『タンポポ 』という映画だと思うが、ちょっと、いや、かなりエッチなシーンがあった。女性の裸体に食べ物を乗せる、いわゆる女体盛りの場面と、男女が生卵を口移ししあい、割れた卵が口の端からどろりと滴れるシーンだ。子ども心に「なんてもの見てるんだ!!」と思いながらも、その官能的なシーンは強烈に印象に残った。

友人も同じ場面を見たのだろう、我々はリカちゃん人形でそのシーンを再現しようとした。部屋の中には異様な空気が漂っていた気がする。しかしわたし達は真剣だったし楽しかった。

同じイメージを共有しながら場面を作ろうとしていることが単純に面白かったし、真剣にリカちゃん人形を扱う友人の目は印象的だった。ちょっと色っぽい目をしていたと思う。

単にイケナイことをしているという高揚感にワクワクしていただけかもしれないが、人と一緒に何かを作ることにトキメキを感じた、人生最初の体験かもしれない。

こう振り返ると、劇団員という選択はこの頃の延長線上にあるのだな、と感じる。

たしかに一緒に演劇を作るという行為はとってもエッチで贅沢なことだと思う。
だからやめられないのかな。

松永明子

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あたしのおうち

2018年度研修プログラム修了公演『あたしのおうち』
日程:2019年3月6日(水)~10日(日)
会場:大森山王FOREST
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2019年度研修プログラム「俳優になるための年間ワークショップ」
オーディション開催中
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